○正しい日本語実用編パート2

F's セールスエッセイ2003年8月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
3年前にこのセールスエッセイで「正しい日本語実用編」を書かせていただきました。
その後の日本語ブームで、最近とみに言葉遣いへの関心が高まっているように感じます。そこで、もう一度、気になる接客の言葉遣いについてとりあげて見ました。
 
 
■気になるバイト語

文化庁の国語に関する世論調査の平成14年度の結果が先ごろ発表されました。それによりますと、「お会計のほう、一万円になります。」という言い方が気になると答えた人は50.6%(平成8年度 32.4%)、「千円からお預かりします」という言い方が気になると答えた人は45.2%(平成8年度 38.4%)と、いずれも6年前に較べて、気になる人が増えています。

この「○○のほう」「**円から」という不自然な日本語については以前のセールスエッセイでも取り上げましたのでご記憶の読者も多いことと思います。その他に、「以上でご注文よろしかったでしょうか?」など、本来は「以上でご注文よろしいですか?」というべきところを過去形で話す若い人も増えています。これなどは、「もう、ご注文されましたね、追加や変更はありませんね!」とダメ押しされているようで、感じが悪いと受け取るお客様は多いと思います。

これらの最近増えてきた不自然な接客の日本語は、ファミリーレストランやコンビニエンスストアで若い販売員が多用することから「バイト語」ともいわれています。若い人はあまり気にならないようですが、中高年のお客様には気を悪くする人が増えているので、思わず接客場面で使ってしまわないよう注意が必要です。

■あしたは休まさせていただきます!?

「あしたは休まさせていただきます」という言い方もよくあります。「さ」入れ言葉とも呼ばれ、本来、「休ませていただきます」というべきところに誤って「さ」を入れてしまうものです。敬語が苦手な人が間違いやすい言い方です。「読ませていただく」「置かせていただく」が正しい言い方なのに、つい「読まさせていただく」「置かさせていただく」と言ってしまうのも同様の間違いです。

お客様から「この店は明日もやっていますか?」と聞かれて、「明日は休まさせていただきます」と答えたりしないよう、「さ」入れ言葉が気にならない若い販売員は特に注意が必要かも知れません。

■恥ずかしい意味の取り違え

本来の意味を間違えて言葉を遣う意味の取り違えも増えています。例えば、「役不足」は、本来、「その人の力量に較べて与えられた役目が小さ過ぎること」を意味します。後輩に「あなたには役不足かも知れないけれど…」とおだててものを頼むのは正しい遣い方ですが、なにかの役をいいつかった時、「私には役不足ではありますが務めさせていただきます」と謙遜のつもりで挨拶すると、「こんなつまらない役を押し付けて…」という意味になります。この場合には「私には力不足で…」というのが正解です。

平成14年度の国語調査では62.8%の人が役不足の意味を取り違えていました。今や、正しく意味を分かっている人が少数派ということになります。

また、「気の置けない人」の本来の意味は「相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい人」ですが、「相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない人のこと」と反対の意味に捉えている人が40.1%もいました。
言葉の意味を取り違えないようにするためには、日頃から不確かな言葉があればマメに辞書を引き、確かめることが役立ちます。

■気をつけたい読み間違い

日本語には、読み間違いしやすい言葉が色々あります。例えば、「たまちゃん人気でかせんじきが賑わっていますね」などと話している人がいます。楽しい話題を取り上げたつもりが、読み間違いで恥をかいてしまいます。河川敷は正しくは「かせんしき」と読みます。また、「これはたんきょうきの商品です」と端境期(はざかいき)を誤読し、意味が通じなかった販売員もいます。

順風満帆は「じゅんぷうまんぽ」ではなく、「じゅんぷうまんぱん」と読みます。「
どうですか、お店の調子は?」と聞かれて、「はい、おかげさまでじゅんぷうまんぽです」などと言ってしまわないよう注意したいものです。

■書き間違いにはパソコンを活用

手紙や文書では、書き間違いにも注意したいものです。例えば、「ぜんごさく」は「善後策」と書きます。「今、前後策を講じております」などと、大事な取引先やお客様に向けて書かないよう注意が必要です。

「絶対絶命のところをご助力いただき…」の「ぜったいぜつめい」は「絶体絶命」が正しい書き方です。危機一髪を「危機一発」と書いたりするのも同様で、気づきにくい間違いなので注意したいポイントです。

「今年は泣かず飛ばずでして」ではなく、「鳴かず飛ばず」が正しい書き方です。「短刀直入に申し上げます」ではなく、「単刀直入」が正しい書き方です。

こうして見ると、つくづく日本語って難しいと思われるかもしれませんが、書き間違いについては、今ではパソコンのワープロ機能の活用で、ほとんどの難を逃れることができます。四字熟語の変換などは、ひらがなで入力し一回で変換すれば、まず正しく変換してくれます。例えば「じゅうおうむじん」を「じゅうおう」と「むじん」に分けて変換すると、「縦横無人」などと間違う場合がありますが、「じゅうおうむじん」と入れて変換すれば、必ず正しい「縦横無尽」に変換してくれます。

手書の手紙を出す際にも、一度パソコンで文章作成してから、手でハガキや便箋に書き写すと、間違いがなくなります。パソコン上だと、文章の推敲や文字量の調整も手書より楽にできますから、一石二鳥ともいえます。

■注意したい名前の書き間違い

その反面、パソコン時代になってから、固有名詞の変換ミスが増えていると聞きます。名前や会社名などの間違いは、相手を重要視していないことになるので、大変失礼にあたります。特に男性名の末尾の「男」「雄」「夫」「郎」、女性名の末尾の「江」「恵」「枝」「絵」などは変換違いに気づかないことが多いので注意したいものです。

また、名字でも、「斎藤」と「斉藤」、「渡辺」と「渡部」、「太田」と「大田」など、大変間違いやすいので、注意したいものです。筆者も長原をよく永原と間違えられることがあります。

最近では、住所録などもパソコンで管理することが多いため、最初に間違って入力すると、相手から注意されるまで何回も間違えてDMなどを出し続けることもありえます。

それでは、せっかくのDMも逆効果になってしまいますので、十分に注意したいものです。

 こうしてみていくと、間違いに気がつかずに日本語を使っていることは案外多いものです。日本語の誤用は、自分自身が恥をかくばかりでなく、気づかないうちに、お客様や取引先の気分を害している場合もあるので、常に注意を払うことが必要です。こうした日本語の誤用をさけるためには、日本語の本を何冊か読んで見ることをお薦めします。折からの日本語ブームで日本語についての本も多数出版されています。コンビニエンスストアやファミリーレストランなど最寄りの店はいざ知らず、デパートや専門店の接客には、より洗練された言葉づかいが求められています。お客様にとって気持ちのよい言葉遣いを目指したいものです。

 
◇ F's は、レナウン・FAコミュニケーションセンターの広報誌です。
 セールスエッセイをまとめた本「ハートフルセールス」が発売されました。
 
Copyright (C) since2003  有限会社 長原マーケティング研究所 All Rights Reserved.