○ハートフル「DMアプローチ」再検証

F's セールスエッセイ2002年4月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
これからは、見込客の開拓以上に、一度でも利用した既存顧客を離さないことが大切です。顧客との親密なコミュニケーションのために、もう一度ダイレクトメール(以下DMと略します)を見直して見ましょう。一人一人の顧客に向けた効果的なDMにはまだまだ工夫の余地があります。
 
 
■ 顧客が求めるDMとは

顧客にとってのダイレクトメールの現状を見てみましょう。1999年に郵政研究所の行った調査によると日本人が受け取るDMの数は平均週3.通となっています。ということは、月に約12通、年162通のDMが一般の人々に届けられていることになります。週に7通以上のDMを受け取る人も1割弱います。

このように多数のDMが届くため、すべてのDMに目を通す人は約半数です。残りの半数は「関心のあるDMしかみない」という調査結果が出ています。

DMについての主な意見を見てみますと、トップは「一回買った店から来るとつい見てしまう」(72%)です。次いで「よくいく店から誕生日カードを貰うと嬉しい」(68%)「手書きメッセージを貰うと暖かみを感じる」(67%)でした。

数多くのDMの中から関心を持つて開封してもらうには、手書きにしたり、お誕生日のデータベースをとっておいてさりげなくカードを送ったりするなど、ひと手間かけた工夫が求められているといえます。

■ DMの効果はどのくらいか

2001年の郵政研究所の調査によると、DMの平均的なレスポンス率は約9%でした。

しかし、レスポンス率は出した相手や使った顧客リストによって大きく異なります。上顧客に出したDMでは平均約18%のレスポンス率が報告されています。

 顧客リスト別には自社の顧客リストを使ったDMへのレスポンス率は約15%と、外部業者のリストを使った場合の約4%を大きく上回っています。

高いレスポンス率を得た理由としては、「顧客に合った商品を掲載したから」(38%)「送付先を絞りに絞りこんだから」(31%)「特典を充実させたから」(29%)「文面を工夫したから」(29%)「デザイン、素材を工夫したから」(24%)「発送時期に細心の注意を払ったから」(17%)といった理由が挙げられています。

DMの効果を挙げるには、自社の顧客リストを充実させ、データベースから読み込んだ、一人一人の顧客にぴったり合った商品を掲載したDMを出すことがポイントといえます。この点については18号【顧客データベース進化論】に載せた個客一人一人に好まれそうな新商品の写真を同封したDMを送っているメンズファッション店の事例を思い出してください。

■ DMはお客様への手紙

お客様に最も喜ばれるのはDMではなく、お店あるいは店員からの手紙だといえます。

この11月、商業界から「だから、私はこの店に行きたい」という筆者監修の本が出ました。約1000人から集めた買物体験の投稿の中から選りすぐったもの101篇を選び、愛される店7つの法則として整理した本です。

その中に「コーヒー豆に添えられる私宛のメッセージ」(稲葉和子さん)と題する体験談があります。稲葉さんは以前住んでいた町にあるコーヒー店の豆の味が忘れられず、引越ししてからも、その店から通信販売で取り寄せています。定期的に届くコーヒー豆には必ず手書きのさりげないメッセージが添えられ、いつも心をほっと慰めてくれるというエピソードです。

メッセージは短いですが、稲葉さんに子供が生まれた話を覚えていて「赤ちゃんと幸せな時をお過ごしでしょうね」と書いてあったりします。稲葉さんは「私のことを覚えていてくれている」と感心します。こうしたやりとりで、稲葉さんと店とのつきあいは5年以上も続いているとのことです。直接店に行けなくても、商品に添えられたメッセージによって、お客と店との親密な関係が維持されていることがわかります。

手書きの手紙やメッセージは顧客にとっては確かに印象深く、リピート利用に繋がります。しかし、忙しい時間の中で手書きの手紙を書くことは大変と思われるかも知れません。また顧客数の多いところでは物理的に無理だということもあるでしょう。その場合には例えば上顧客だけには必ずお誕生日には誕生カードを出すというように絞り込んではじめてみると続けやすいと思います。

毎日一人の顧客に一枚バースデイカードを書けば一年には365人の顧客に手書きの手紙が届くことになります。お客様への手紙は、少量づつ、頻繁に、随時書くのが続けるコツです。構えずに思い立った時から初めてみましょう。筆不精で、書きなれない場合は

ハガキや封筒の一部にデザインやイラストなどを印刷した用紙などを使い、短い文章でもかっこうがつくようにすることもポイントです。あまり、形式にとらわれず、「昨日はご来店ありがとうございました」「新商品が入りました」「先行予約始まります」など、最も伝えたいことを最初に大きく書くこともポイントです。書きなれてくるとそれほど苦ではなくなります。切手などもできれば記念切手などを用意しておいて使うと気が利いています。

■ バースデイカードで固定客を掴む
ある寿司チェーンは、バースデイカードで固定客を掴んでいます。お誕生日前後2週間2割引の特典をつけたハガキDMを毎月出します。DMのレスポンス率は10%、店長からの誕生日おめでとうコールを加えるとプラス20%、さらに訪問しておめでとうのご挨拶をするとプラス10%で、計40%のレスポンスを得ているということです。

しかし、簡単にわからないのがお誕生日のデータです。このチェーンでは、顧客情報を集めるために会員制度をとっています。「誕生日割引や優待のある会員になりませんか」と新規客にアプローチして、誕生日割引に必要ということで誕生日情報をきちんと押えています。誕生日は必ず一年に一回は誰にも回ってきます。クリスマスやバレンタインなどの年中行事よりも、競合店との競争が少ないため顧客への効果が期待できます。郵政研究所のデータにもあったように「バースデイカード」は顧客にとっても嬉しいDMです。扱い商品に合った特典を工夫してアプローチすれば大変有効です。前後2週間あるいは誕生月なら使えるというように期間の幅をとることによってレスポンス率も高まることでしょう。

■ 何回も出すことによって効果が高まる

DMは一人の顧客に何回か出すことによって効果が出てきます。一般的にはDM3回の法則といいます。少なくとも同じ顧客に3回は出してみましょう。例えば、最初はサンキューレター、次は購入商品についてのおたずねやアンケート、3回目に新商品のお知らせといったように、変化をつけて出してみます。ポイントは、売り手から「知らせる」ばかりでなく顧客に「たづねる」アプローチと組み合わせることによって、顧客と双方向のコミュニケーションを工夫することです。適度にインターバルを開けて適切なタイミングで出すことも必要です。

■ デジタル・アナログ融合が効果的

このエッセイの22号【インターネット顧客活用法】では電子メールを中心にした顧客アプローチをご紹介しました。安価でスピーディに顧客にコミュニケーションができる電子メールは確かにこれからますます重要なダイレクトコミュニケーションのツールとなるでしょう。

しかし、現状では顧客側から見ると、心のこもった手紙に勝る効果的なDMはないようです。デジタル化が進めば進むほど、お客の見えないところはIT等でできるだけ効率化しつつ、お客との接点では可能な限り人間的なアナログ対応に徹することが、顧客の共感を呼ぶことが見えてきました。DMについても、顧客データベースはパソコン等を使って緻密に構築しつつ、それを基にした一人一人の顧客へDMは手書きで顧客の心を打つといったデジタル・アナログ融合型の高度なアプローチが求められています。

 
◇ F's は、レナウン・FAコミュニケーションセンターの広報誌です。
 セールスエッセイをまとめた本「ハートフルセールス」が発売されました。
 
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