社団法人日本マーケティング協会発行

マーケティングホライズン
2006年1月号 DISTRIBUTION’05 キーワードは、‘モノより、売り方

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

2005年は、アイチューンミュージックストアの配信開始、ICタグを使ったフューチャーストアの実証実験、ライブドアのセシール買収など流通業に新しい波がひたひたと押し寄せた。一部には株高などからミニバブルの様相もあり、高額品が売れ出し富裕層を取りこむ販売手法に関心が集まった。ダイエーの再生スタート、低迷が続いた百貨店の業績回復など明るい動きも見えてきた。

■元気な東海地区

 愛地球博で注目を集めた名古屋周辺では、2月「セントレア」(中部国際空港内商業施設)、3月名古屋三越の専門店館「ラシック」、「土岐プレミアムアウトレット」(岐阜)、5月風力発電および太陽光発電の導入、一部壁面の緑化など環境への配慮を高めたエコストア「イオン千種ショッピングセンター」(写真1)など話題の大型商業施設が続々オープン、元気な東海地区を印象づけた。

■駅なかが熱い

JRグループでは、3月大宮駅、10月品川駅に駅構内商業施設エキュートをオープン。駅ビルは乗降客を狙う商業施設だが、改札口を出ずに利用できる駅なか商業施設では乗降客に加えて乗り換え客も取り込む。

東京メトロも、駅なか開発に向けて動き出し、12月に銀座線・半蔵門線・千代田線が乗り入れる表参道駅に「エチカ表参道」をオープンさせた。

■セブンアンドアイホールディングス発足

 イトーヨーカドーとセブンイレブンは9月持株会社セブンアンドアイホールディングスを設立。12月には西武百貨店、そごうを傘下におくミレニアムリテイリングとの統合を発表。2006年に予定される統合後は国内トップのイオングループの売上高を抜き、世界5位の小売業になる見込み。百貨店を傘下に入れることで、総合スーパーのテコ入れやショッピングセンターへの本格進出を狙う。

■ダイエー、食品で再生図る

 3月産業再生機構はダイエーのスポンサーを丸紅連合に決定。5月新会長に林文子氏、新社長に樋口泰行氏を迎え、再生がスタートした。12月にはCIを刷新、キャッチコピーに「ごはんがおいしくなるスーパー」を採用、脱「総合スーパー」を目指す。店舗閉鎖を進める一方で、コンビニエンスストアの利便性と食品スーパーの豊富な品揃えを融合した実験店舗「フーディアム」をオープンさせた。

■生鮮100円コンビニ

 コンビニエンスストアのローソンは5月「ストア100」一号店をオープン。生鮮野菜や生活雑貨などを税抜き100円で販売し始めた。エーエムピーエムジャパンも野菜や果物を98円で販売する「フードスタイル」を3月に東京都内に出店。コンビニエンスストアは、100円ショツプ・食品スーパーなどとの競争が激化、従来の20〜30代若者層に加えて、主婦や中高年の取り込みを狙う。

■秋葉原にヨドバシカメラ

「秋葉原先端技術テーマパーク構想」が動き出した秋葉原は、おたくとマニアの街から、子供から大人までが集う一大テーマパークへと変貌中。その秋葉原に8月つくばエキスプレスが開業、9月ヨドバシカメラが国内最大級の家電量販店「マルチメディアAkiba」をオープンした。家電に加えてゴルフ用品、おもちゃ、美容関連商品、レストラン街などを揃え、家族層の取り込みを狙う。

■百貨店に薄日

 百貨店では、宝飾品、高級輸入ブランド、薄型テレビなどの高額品の売上が拡大し、11月12月は久々に対前年同月比売上増に転じる店舗が増えた。百貨店復調は個人消費の本格回復の証とも見られ、今後の動向が注目される。私的整理を終結した西武百貨店と民事再生法が終結したそごうを傘下におくミレニアムリテイリングでは、一時閉鎖したそごう心斎橋本店を9月開店、新生を印象づけた。

■バナリパ日本デビュー

ギャップジャパンは9月「バナナ・リパブリック」の日本国内一号店をプランタン銀座内にオープンした。「GAP」進出時の経験を踏まえ、サイズやパターンなどを日本仕様に変更、品揃えの約3割は日本限定にするなど日本市場に合わせた商品戦略を徹底。バナリパの愛称で日本でもすでに知名度のあるブランドであり、適度に流行を取り入れた手が届く高級感で、順調な滑り出しとなった。

■アイチューンミュージックストア

 アップルコンピューターのiPod向けに音楽配信する「アイチューンミュージックストア」(写真2)が8月に配信開始。開始4日間で100万曲を販売した。ソニー系プレーヤーに対応した配信サイト「モーラ」、ウインドウズ・メディア・オーディオ系の多数の配信サイトも開設され、日本でも本格的な音楽配信時代が始まる。音楽配信が音楽市場の裾野を広げることができるかが注目される

■ライブドア、セシール買収

今年何かと話題をまいたIT企業ライブドアは10月通販業界4位のセシール買収を発表。ライブドアは、セシールが持つ約千五百万人の会員を取り込むことでネット販売の拡大を狙い、ライブドアの強みである金融部門を生かして、セシールの会員に金融商品などを提供する。セシールの通販事業を、ライブドアのインターネット商店街事業などと連携させ、最大手の楽天に挑む

■ロハス売場

 大丸ピーコックのトルナーレ日本橋浜町店にマクロビオティックを意識した惣菜が登場、三越恵比寿店で、素材や手作りにこだわった野菜や加工食品を集めた「ロハスウイーク」が開催されるなど食品スーパーやデパチカではスローフードの次なるキーワードとして、健康と環境保護に関心を持つライフスタイルLOHAS(Lifestyles Of Health And Stainability)がクローズアップされた。

■富裕層に照準

日本発の本格的な高級ブランド車「レクサス」の専門販売店では、上質な内装や専門の研修施設で鍛えられた販売員の応対が話題に。車本体を売るだけでなく、サービスを含めてブランドを売る戦略で富裕層を呼び込む。景気回復と株高傾向も追い風となり、高級ブランド主催の豪華なパーティ・イベントや会員限定の特別サービスなど富裕層に照準をあてた販売戦略に注目が集まる。

   ICタグ店舗実験スタート

 11月経済産業省は、小売業5社(イオン、クイーンズ伊勢丹、丸井、三越、ファミリーマート)と日本版フューチャーストア・プロジェクト(未来型店舗サービス実現のための電子タグ実証実験)を開始した。多様な小売業態での電子タグ活用による顧客満足度の向上と店舗業務の効率向上の可能性を探るもので、国際標準に基づいた電子タグの小売業界への実用化が動き出した。

■福島大店法、業界に衝撃

 郊外に大型ショッピングセンターが続々誕生する一方、さびれる中心市街地。これに対して福島県議会は10月に大規模店舗の出店を規制する全国初の商業まちづくりの推進に関する条例案を可決した。大手小売業は「大店法が地域単位で復活するもの」と反発。

中心市街地の凋落は出店規制で止めることができるのか、国会でのまちづくり3法の見直しの動きに注目が集まる。

 

 
 
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