社団法人日本マーケティング協会発行

マーケティングホライズン
2007年1月号 DISTRIBUTION’06 キーワードは、‘メンズ’と‘グローバル’

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

2006年は、経営統合や資本提携による流通再編が続いた1年だった。そのなかで、ユニクロやサマンサタバサがニューヨークに旗艦店を出店、グローバル化の布石を打ったことが記憶に残る。今後は世界市場を狙う小売業が増えていくのではないか、そんな兆しが見えた年であった。109をはじめとするメンズへの取り組みも、今後広がりが予想される。

■進む流通再編

 セブンアンドアイホールディングスは6月に西武百貨店、そごうを傘下におくミレニアムリテイリングを完全子会社化、イオンは10月に丸紅主導で再建中のダイエーとの資本・業務提携に向けて独占交渉権を獲得するなど巨大流通グループを核にした業界再編が進行。8月紳士服専門店コナカによる九州地盤のフタタの完全子会社化、10月親会社の統合で阪神百貨店が阪急傘下入りするなどM&A、資本提携の動きが活発な一年だった。

■大型SC、個性を競う

 森ビルは2月表参道ヒルズをオープン、安藤忠雄設計の街歩きの感覚で歩ける空間が新名所に。東京建物は4月東京錦糸町にオリナスをオープン、下町のSCとして話題を呼ぶ。三井不動産の子会社ららぽーとは9月ラゾーナ川崎プラザ、10月ららぽーと豊洲、11月ららぽーと柏の葉を相次いでオープン。ラゾーナは「旅」と「音楽」をテーマにかかげ旅行商品や音楽関連商品を充実、ららぽーと豊洲では、子供が職業体験できる「キッザニア東京」が話題を呼ぶ。11月にはダイヤモンドシティ・ミューが東京武蔵村山にオープン。イオン・三越が核テナントとして入居し、老舗百貨店が郊外型SCに入る初めての試みとして注目される。ショッピングセンターは出店後背地の商圏に合わせて個性を競う時代に突入した。

イケア日本再デビュー

4月、千葉県船橋市に世界最大の家具小売チェーン「イケア」がオープン。1974年に東急百貨店と提携して進出し86年に撤退しており、今回は再上陸となる。前回の経験から、「日本人の生活をすみずみまで調べた」という品揃えは、北欧センスの商品が安価で買える魅力で、人を集める。組み立て家具・持ち帰りという販売スタイルが日本にどこまで定着するかは今後の課題といえる。

■マルキューメンズ

渋谷109−Aは、3月に5階をメンズフロアに改装、9月には6階もメンズフロアに。ヤングファッションの代名詞、109がメンズ専用フロアを設けたことで注目される。ラフォーレ原宿も05年9月から男性向け衣料を本格導入。ワールドは11月東京・八重洲に男性向け雑貨セレクトショップをオープン。おしゃれな男性向けショップは、衣料・雑貨・スキンケアへと拡大を見せている。

■手が届く高級ブランド「コーチ」大ヒット

 海外高級ブランドの直営店は、銀座などの一等地に続々進出しその度にTVなどの話題に。しかし、ブランド中古販売店での値崩れなど一部には過剰感も。その中、米国生まれのブランド「コーチ」の快進撃が注目された。「コーチ」はルイヴィトンなど高級ブランドと一般品の中間、5万円前後の価格帯で店舗数を拡大。ライバルブランドが少ない隙間の価格帯で、働く女性を中心に支持を獲得した。

■ユニクロ、世界へ

 柳井社長復帰1年目で2期ぶりの増益を果たし業績好調なユニクロは、内部充実と海外展開の両面作戦を進行。国内では相次いで開発される大型ショッピングセンターなどに、ユニクロの大型店をオープン。新しい低価格帯のブランド「ジーユー」一号店をダイエー内に10月オープンした。11月ニューヨークソーホー、12月上海に大型の旗艦店をオープンさせ、グローバル化のための布石も着々。

伊勢丹、売場づくりで顧客囲い込み

高級ブランドなどの売れ行きが好調な百貨店ではリニューアルが活発。メンズ館が成功した伊勢丹新宿店では、統一環境の売場づくりの全館化が進行中。ブランドの寄せ集めではなく、デパートとしての独自性を追求した売場づくりで顧客の囲い込みを狙う。12月に一部オープンした食品売場では従来のデパチカのイメージを払拭する食のファッションを展開、今後の動きが注目される。

■コンビニ、シニアと女性獲得に本腰

 全国で4万店を超え、既存店売上げの前年割れが続くコンビニでは、男性や若者から高齢者や女性に的を絞った次世代型を目指す動きが進行中。ローソンは「ナチュラルローソン」の本格拡大や子育て応援コンビニ「ハッピーローソン」の実験店舗開設などで女性客を狙う。セブンイレブンは高齢者の自宅に出向き注文を受け無料で配送する御用聞きサービスに力を入れるなど、各社次の一手を探る。

■CSのためには、まずES

 採用難や離職率の高まりで出店に必要な販売員の確保もままならない状況に苦慮するアパレル企業では、正社員化に動き出す。ワールドは11月販売子会社のパート・アルバイト社員のうち、希望した約5000人を社員に登用、サンエーインターナショナルは9月販売職の契約社員を正社員に。人口減少社会を見据え、CS(顧客満足)のためには、まずES(従業員満足)から見直す動きが活発。

■CD店にネット配信の波

 米国では、8月米タワーレコードが会社更生法を申請。iPodなど向けに音楽配信するネット販売の普及や大手スーパーの安売りなどで経営が行き詰ったものと見られる。02年にMBO(経営陣による会社買取り)で独立している日本タワーレコードには直接的な影響はない。しかし、日本の音楽ソフトの売上げは減少傾向。再販制度に守られているとはいえ、CD店の今後は予断を許さない。

駅なか課税強化

商業施設の充実が著しい駅なかに、「駅なか課税強化」の動きが始まる。東京都は07年度から、「駅なか」を持つ鉄道駅の用地に対して固定資産税の評価替えを実施することを決定。JRおよび小田急、東急、京王などの私鉄駅で駅なか商業施設の開発が進むなか、客足が遠のくなど影響を受けている駅前商店街は「駅前と駅なかの税負担は公平であるべき」と課税に賛同。

■街づくり三法見直し

 まちづくり3法のうち、都市計画法、中心市街地活性化法が通常国会で改正される。8月施行された改正市街地活性化法では、人・店を中心街へ集め、「コンパクトシティ」による地方都市の再活性化をもくろむ。07年施行予定の改正都市計画法では延べ床面積1万平米を超える大規模集客施設の出店は難しくなるため、郊外大型SCおよびその開業に合わせて拡大してきた専門店は岐路に立つ。

 
 
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