商業界 
 
2007年3月号 

 2007年小売業を待ち受ける9つの変化の波 3マーケット変化の方向

「上流」「下流」二極化の行方とピンポイントターゲット(抄録)

(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

「いつかは○○」から「私は○○」へ

 一億総中流といわれた消費者の意識は経済力の差を背景に変容しています。かつては、「いつかはクラウン」という名キャッチコピーに代表されるように、ほぼ全国民が低いグレードから高いグレードまでの商品ヒエラルキーを意識し、その中で自分自身も年々収入が上昇するという前提を信じながら、ステップアップを計っていく消費行動が一般的でした。現在、この消費ヒエラルキーは失われ、「いつかは○○」から自分の身の丈にあった「私は○○」へ、消費態度は変化しています。

消費階層化で小売業が押えるべきポイント

  小売業にとって上流・下流の分類は慎重に扱う必要があります。例えば、所得の低い層はお金がないので「できるだけ安く買おう」としますが、所得が高いからと言って「出来るだけ高く買おう」とはしません。できるだけ安く買いたいのは、共通した買物心理です。その上、お金がある人ほどコネやツテ、あるいはインターネットを駆使して安く買おうとします。そのような消費態度を貫いてきたからこそお金持ちになったともいえます。商品やサービスの価格価値をシビアに判断する傾向は上流・下流に変わりはないと考えるべきです。

 このような共通点を押さえた上で、消費階層分化の中で、小売業が抑えるべきポイントを挙げてみましょう。 

1. 脱エージセグメンテーション

 今までは、「ヤング向け」「シニア向け」など年齢でターゲットを想定すれば事足りました。これからは、「年収300万円以下の20代男性」など、財布の中身も考慮に入れたよりきめ細やかなターゲット設定をした上で売場作りや品揃えを行う必要があります。

2.階層化を視野に入れた地域戦略

 以前から多少はあった地域特性ですが、その差が明確になってきています。出店戦略や既存店の適切な品揃えのために商圏の人々の実態を知ることがより重要になってきています。町丁目・字別年収推計データなどを用い、きめ細かな商圏戦略を立てる必要があります。

3. コミュニケーション戦略の差異化

コミュニケーション戦略も狙うターゲットにより大きく異なります。マス層にはTV広告が効きますが、富裕層はマス層ほどテレビを見ません(見る時間がない)。富裕層では、口コミが重要なので、キーマンをいかにつかむかがポイントになります。マス層では新聞をとらない人も増えています。当然、中に入っているチラシも見ません。チラシ以外での訴求が必要になります。

4.ポイントサービスの差異化

 買物のお得感は上流・下流問わず求めています。ただし、ボトム層ではクレジットカードを持てない場合もあり、現金主義の人が多いのでポイントやスタンプなどのサービスが有効です。逆に富裕層では一枚でマイレージと買物ポイントが合算できるカードが人気です。一店でのお得より、総合的お得感を求めるのが富裕層といえます。

5.上流はサービス、下流はプライス

 上流に行けば行くほど、ものによる差別化には限界があります。他のどこよりも「この店」「この販売員」から買いたいと思わせるサービスや買物環境の提供が重要です。逆に下流になればなるほど、価格重視志向なので余分なサービスは不要です。

6.上流はサロン、下流は溜まり場

 上流になればなるほど、その店で買う客の質も見ます。自分もその一員であることを確認できるステータス感が店選びのポイントになるからです。一方、下流では、居心地のよいアットホーム感、自分達の居場所感があることが求められます。

7.上流はオーダー 中流は限定 

上流になればなるほど、他の人が持っていないものを欲しがるのでオーダーメイドに向かいます。逆に下流は皆と同じものに満足感を得ます。その中間では、ブランド品にイニシャルを入れるなどワンポイントで自分らしさを付け加えるセミオーダーや限定品が求められます。

以上、上流と下流の消費スタイルの違いに注目し、小売業の留意点を挙げて見ました。実際には、上流・中流・下流それぞれのなかにさらに細かい顧客セグメントがあります。そのなかで、ピンポイントでターゲットを捉えることができる品揃えと販売スタイルを把握し徹底することがポイントといえます。

 
 
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