社団法人日本マーケティング協会発行

マーケティングホライズン 2007年10月号 激化するファストファッション戦争

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

 流行を素早く取り入れたチープファッションを指して、数年前からファストファッションという言葉が使われだしている。早い・安いファストフードのファッション版というわけである。ファストフード業界が、マクドナルド、ケンタッキーフライドチキンなど大手チェーンに寡占化されているのと同様、ファストファッション業界も、世界的に見て「GAP」「ZARA」「リミテッド」「H&M」など大手グローバルチェーンが占めている。こうした世界的なアパレル製造小売業の売上高はいずれも日本円にして一兆円を越す。日本のファストファッションの代表格、ユニクロを経営するファーストリテイリングの売上は5351億円(2007年8月期予想)。それに続くしまむらは3527億円(2007年2月期)の規模である。ファーストリテイリングが中国、ヨーロッパへの進出やM&Aで企業規模を更に拡大しようとしているのは2010年までにこのような巨大ファッション企業に伍す存在になることを目標としているためといわれている。

■「H&M」来秋日本上陸

ファストファッションの中で日本に未上陸の「H&M」はスエーデンを本拠地とし、全世界に1345店舗(200611月期)を展開している。最新のトレンドファッションを安く売るという意味で「ZARA」と並ぶ存在である。安いとはいえ、有名デザイナーとのコラボレーションをキャンペーンとして実施するなど、コピーファッションだけではないことを常にアピールしている。来秋、この「H&M」が日本の原宿と銀座に1、2号店を出す。「H&M」は銀座では東京ガスホールビルを再開発する商業ビルに出店することになっており、近くにZARAやユニクロの旗艦店もある。銀座は、ニューヨーク五番街が既にそうであるように、ラグジュアリーファッションだけでなくファストファッションも妍を競う場所となりそうだ。

二極化かボーダーレス化か

ラグジュアリーファッションの対極にあるファストファッションの台頭に、格差社会の反映を見る識者も多い。しかし、ファストファッションとラグジュアリーファッションを賢く使い分けている消費者も多い。ファストファッションのTシャツにラグジュアリーブランドのバッグといった組み合わせもファッション規律がゆるやかな日本では‘あり’である。ただ、欧米人のテイストと日本人の好みとは微妙に違う。品質に対するこだわりも日本人は強く、安いものにも、それなりの品質を求める。日本進出では先行した「ZARA」も1998年参入から約9年たつが、日本市場での人気は欧米ほどではないといわれている。「H&M」は日本市場で機が熟すのを待っての進出という。先行したZARAが、日本人にファストファッションの一例を示し、ある程度浸透させてきているし、ユニクロ、しまむらも安いだけでなく、安くておしゃれなファッションをそれなりに作り市場を開拓している。若い人には、マルキューファッションなど、安くてワンシーズンで使い捨てるファッションの買い方も定着してきた。そうしたなかで「H&M」がどのように日本市場に受け入れられるのか、日本の既存のSPAがどのような形で戦うのか、その展開が注目される。 

 
 
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