社団法人日本マーケティング協会発行

マーケティングホライズン
2008年1月号 DISTRIBUTION’07 キーワードは、‘エコ、大人、脱物販’

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

 07年は、06年に続きSC開設ラッシュが続いた。人口構造の変化を背景に、新商業施設のテーマは大人シフトへ。エコバックなどエコロジーに配慮した買物スタイルがトレンドになる。電子マネーや銀行業への参入、SCデベロッパー事業への注力など流通業の脱物販の動きも顕著になった。国内市場の将来性を見据え、海外、特にアジアに積極出店する流通業も拡大。長期低迷する百貨店業界には大型のM&Aが続いた。

■百貨店大統合時代
9月、大手百貨店大丸と松坂屋が経営統合し、J.フロントリテイリングを発足させた。10月、親会社同士の合併から阪急百貨店と阪神百貨店が経営統合しエイチ・ツー・オーリテイリングが発足。08年には三越と伊勢丹が合併することが決まった。厳しい経営環境の下、大手百貨店は合従連衡に生き残りを賭け、三越・伊勢丹、Jフロントリテイリング、高島屋、ミレニアム(そごう・西武)の4大グループ中心に再編が進む。

■続くSC開発ラッシュ
 郊外への大型店出店を抑制し、中心市街地の活性化を促す狙いの改正都市計画法が11月に施行されたが、07年度中に新規開業したSCは89箇所と前年の79箇所を上回った。施行前の駆け込みも加わり、08年までショッピングセンター設立ラッシュが続く。なかでも、8月にダイヤモンドシティを吸収合併した「イオンモール」は08年2月までに国内外合わせて150モールとなる見込みで、中国を中心にアジア展開にも積極的に取り組む戦略を示している。

■‘大人’をテーマに競う新商業施設
東京では、東京ミッドタウンや新丸ビル、有楽町駅前を一新し、人の流れを変えた丸井・イトシア(写真1)とマロニエゲート、大丸東京店の移転開業、大阪では、なんばパークス(写真2)のオープンなど街の顔を変える大都市中心部の大型開発が盛ん。その多くに共通する開発のキーワードは「大人」。ヤングに強い丸井も銀座を意識し、「ちょっと大人の丸井」をアピールし、20代後半から30代前半を狙う。

■ラグジュアリーブランド、銀座に集中
11月ブルガリ、アルマーニ、12月ダンヒルが旗艦店を東京・銀座に相次いでオープンした。これらのラグジュアリーブランドの出店スタイルは、物販だけでなくブランドコンセプトで統一したカフェやスパ、ギャラリーなどを一つの館で展開し、ブランドの魅力をトータルにプレゼンテーションするのが主流。日本人だけでなく、銀座をおとずれる外国人訪問客に向けての広告塔的役割も担う。銀座は、08年にはファストファッションの代表格H&Mの進出も予定され、世界のショーウインドー化が進行中。

■ユニクロ、MUJIに続けと海外進出
 世界14カ国に72店舗を持つ無印良品は11月に米国では直営一号店となる73店舗目をニューヨークソーホーに開店。ソーホーに昨年旗艦店をオープンしたユニクロは11月ロンドンに旗艦店出店。12月にパリ郊外に出店するなど着々と海外戦略を進行。少子化、人口減少の進む日本市場の限界を見据え、しまむら・ハニーズなどの専門店、ワールド・オンワード・イトキンなどの大手アパレル、ミキハウスなどの子供アパレルも海外市場開拓に注力。特に、中国・韓国・台湾を中心にアジアに積極出店を進める。

■ヤマダ電機、駅前に進出
郊外中心に展開してきた家電業界最大手ヤマダ電機は2月仙台駅前、7月東京・池袋駅前に出店。ビッグカメラ、ヨドバシカメラなど駅前勢力との対決が注目を集める。07年3月期で一兆4436億と2位以下を大きく引き離したヤマダ電機は、これまで主戦場としてきた郊外での出店余地が狭まっていることもあり、08年以降も駅前出店計画が目白押し。

■ナナコvsワオン
 3月スイカとパスモの相互利用がはじまり、一気に浸透しはじめた電子マネーに大手のセブン&アイ・ホールディングスはnanaco(ナナコ)、イオンはWAON(ワオン)で参入し、4月サービスを開始した。両者ともキャラクターは動物でナナコはキリン、ワオンは犬。ナナコはコンビニ、ワオンはGMSを起点に電子マネーでも流通2強が激突。

■イオン銀行
 10月、イオン銀行が発足。01年に開設されたセブン銀行に続き流通系銀行が誕生した。手数料収入をメインとするセブン銀行に対してイオン銀行は住宅ローンなど個人向け貸し出し業務も行う。ドイツのメトロ、イギリスのテスコなど海外でもスーパーマーケットの銀行参入には先行例があり、多くの来店客を対象とした新しい金融業として注目される。

■ビリーが証明したTV通販の底力
 07年大ヒットした「ビリーズブートキャンプ」。DVDと運動器具のセットが爆発的に売れた。ブームに火をつけたのはテレビ通販「ショップジャパン」。オリジナル映像に日本人モニターの感想を加え、繰り返し放映し認知度を高める。ネット時代といわれながら、チャンネルをひねれば簡単にアクセスでき、衝動買いしやすいTV通販の売上げは年々伸びている。ビリー隊長ブームは、それを再認識させた。

■お兄系ファッションに注目
 ギャル男が好むワイルドセクシー系のメンズファッション「お兄系」は、109メンズフロアが発火点になったことからマルキュー系メンズとも呼ばれているが、昨年から今年にかけて、名古屋のサンシャイン栄、丸井の大宮店、柏店などにも拡大。08年2月にオープンする阪急百貨店メンズ館には人気ブランドを集積したお兄系ゾーンの開設が予定され、ヤングメンズ市場の新興勢力として注目されている。 

■アニヤ・ハンドマーチ狂想曲
レジ袋を使わず繰り返し使えるエコバッグは環境問題へのささやかな協力の証として生活者にも浸透。エコバックに有名ブランドも参入し、おしゃれなライフスタイルとして広まった。そんな中、英国で人気のアニヤ・ハンドマーチのエコバッグが7月に発売。「アイム・ノット・ア・プラスティックバック(私は使い捨てのレジ袋じゃない)」とバッグに書かれたメッセージはそっちのけに、ブランドのバッグが2100円という低価格限定販売ということに飛びついた消費者が、発売前夜から大行列をつくり、争奪戦を展開。転売目当てに並んだ人も多かったという。環境保護とは名ばかりの大騒動だった。

■駅なか、働く女性にも優しく
10月、エキュート立川、グランスタ東京が相次ぎオープンし、今年も拡大した駅なか。エキュート立川では、保育園やデンタルクリニック、英会話スクールなどのサービス施設を併設。同業態では初の試みとなる駅型保育園では、延長保育、一時保育など、幅広いサービスをポピンズコーポレーションと提携して提供、地域に密着した商業施設を目指す。

■進化するデパチカ
 6月伊勢丹新宿店の食品フロアがリニューアルオープン。食をファッションの切り口でとらえ、デパチカのイメージを一新した。3月にオープンした流山おおたかの森SCには「タカシマヤ フードメゾン」、同時期オープンのららぽーと横浜には「大丸フードマーケット」などの食品に特化した新店が登場。SC時代に対応する日本流の百貨店の出店形態として注目された。

 
 
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