社団法人日本マーケティング協会発行

マーケティングホライズン 2010年1月号 
DISTRIBUTION’09 キーワードは、プライス、リサイクル、エンターテイメント

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

 

激安、量販店のディスカウントストア化、百貨店の量販店化など、底の見えないデフレ現象が小売業を覆った1年だった。その中で、ファストファッションなど価格の安い業態に人気が集まった。節約しながらも楽しみを求める消費者ニーズを受け、リサイクル店や手作り材料店なども注目された。

激安ジーンズ

 09年小売業の価格競争を象徴するアイテムは、激安ジーンズ。3月、ファーストリテイリング傘下の「ジーユー」が990円ジーンズを発売。5月、セブンアンドアイホールディングスのディスカウント店「ザ・プライス」が880円、8月、「イオン」も880円ジーンズを相次いで発売、10月には、「西友」が850円、「ドンキホーテ」が690円を出した。激安ジーンズが客を呼び、他の衣料品のついで買いを促進する効果がある一方、衣料品の価格競争を加速させた。 

下取りセール活況

 0812月に大手スーパー「イトーヨーカドー」がはじめた下取りセールが、量販店、百貨店、専門店、メーカーにまで広がった。下取りで発行される買物券のうち、実際に利用されるのは2〜3割程度という。新しいものを買うモチベーションよりも、不用品を処分したい消費者の潜在ニーズの強さが示された。下取り品を開発途上国に届けたり、再利用したりすることも、エコロジーへの関心から消費者に好感された。

ファストファッション、快走

 ファーストフードのように、安い早いファッションを意味するファストファッションという言葉が浸透しはじめる中、4月、米国生まれのファストファッション「フォーエバー21」が原宿にオープンし、ファストファッションの人気拡大に一役買った。外資の進出は、シマラーと呼ばれる若いファンが増加した「しまむら」など、日本のファストファッションにも好影響を与える一方、百貨店ファッション売場から、さらに消費者の足を遠ざけた。H&Mは2010年には、東京・武蔵野市の伊勢丹吉祥寺店跡地や武蔵村山市の大型SC内の三越跡地にも進出予定で、ファストファッションが百貨店の撤退跡を埋めていく。 

ユニクロ、一人勝ち続く

 08年ヒートテックで、快進撃した「ユニクロ」は、09年も、ブラトップやネオレザー、11月には+J(著名デザイナー、ジル・サンダーの監修商品)を発表するなど、次々に新商品を打ち出し、都心部での出店を加速させ、低迷する小売業の中で独走、09年8月期連結決算では最高益を更新した。8月にはパリ店をオープン、9月には東京ガールズコレクションに参加、11月には創業60周年セールを朝6時から開始するなど、常に新しい話題を発信し続けた。 

エコポイントで活況 

 5月、省エネ家電の購入を後押しするエコポイント制度がはじまり、エコポイント対象の薄型TVや冷蔵庫が売れ、大手家電店が潤った。薄型TVは録画機能つきやデジタル化への移行も追い風となり、冷蔵庫は節約消費で内食が増えたことからの買い替え需要も堅調だった。大手家電店の2010年3月期の業績予想は増益ないしは黒字転換が期待される。 

遊べるショッピングセンター

 2月、「イオン」が全国7箇所のショッピングセンター(SC)出店計画の凍結を発表するなどで、今年は大型出店が減少。その中で9月埼玉・三郷にオープンした「ららぽーと新三郷」は、吉本興業の水族館やキカンシャトーマスのテーマパーク・トーマスタウン、ボウリングやカラオケ、様々なスポーツなどが楽しめるラウンドワンスタジオなど、遊べる施設を充実させ話題となった。初日には7万人が訪れ、好調なスタートとなった。 

アウトレットモール好調続く

 郊外型SCが退潮傾向の中、アウトレットモールは好調。良いものを出来るだけ安く買いたい消費者心理に3月末からの高速料金引き下げの影響も追い風に。大手チェルシージャパンは7月、同社8箇所目の「あみプレミアムアウトレット」を茨城県に開業。12月、東京お台場のヴィーナスフォートでは、「東京都心初」をうたい、1フロアをアウトレットに転換した。 

農産物直売所が人気

 農産物直売所が人気。スーパーでは安くても売れない野菜が特売所では高くても売れる。生産者の顔が見える安心感や品質に対する信頼感、ここだけでしか買えない限定感が人気のポイント。また、ふだん手に入らない珍しい商品や特産品と出会える買物スポットとして、道の駅が、高速道路無料化への動きも追い風となり、あらためて注目を集めた。 

進化する通販

 08年度のネット販売を含む通信販売市場は推定8兆円を超え、百貨店、コンビニを上回った。なかでも、ネット通販の成長は著しく、日常品を扱うネットスーパーやアパレルファッションまで、広範囲に浸透しはじめている。例えば、丸井の「ネットで選んで、丸井で試着」の仕組みは、ネットで注文した商品を店で受け取ることができ、試着してサイズが合わなければ返品できるシステム。こうしたネットとリアル店舗との連動の進化も、ネット販売を拡大するポイントになっている。

 百貨店の模索続く

 セブンアンドアイグループ傘下のそごう・西武では、グループとの連携による現状打開を目指し、一部店舗にセブンプレミアムなどのPBや自主開発の値ごろ感のあるPBを揃え、「価格と価値のバランス」を再構築しはじめた。大丸・松坂屋では、一部店舗に紳士服量販店はるやま商事の「パーフェクト・スーツ・ファクトリー・プラチナ」を導入。11月には買収したそごう心斎橋店を大丸心斎橋店・北館として再開業したが、そこには値ごろな若い女性向け専門店を多数導入。管理スタツフも最小限にしてローコスト運営を狙う。三越・伊勢丹は5月三越池袋店を閉鎖、まずはリストラに注力するなど、各社それぞれの取り組みで打開を図る。

ディスカウントストアに大手スーパー参入

 食品や日用品を低価格販売するディスカウントストアが節約志向を追い風に店舗数拡大。「オーケー」「ベイシア」「大黒天物産」「ジェーソン」などが出店を加速させた。不振の大手スーパーもディスカウント店への業態転換や新規出店で参入。セブン&アイは「ザ・プライス」、イオンは「アコレ」「イオンスーパーセンター」などのディスカウント店に注力しはじめた。「西友」もウォルマートに倣い、ディスカウントストア化を進行。 

リサイクル店が人気 

 モノを大切にする循環型社会と節約志向があいまって、リサイクル品の購入に抵抗感のない人が増え、リサイクル店が台頭。首都圏中心に店舗拡大する「トレジャーファクトリー」が注目された。新しい商品と中古品を独自のセンスでセレクトして販売する店も登場。丸の内ブリックスクエアにオープンした、パス・ザ・バトンが話題を集めた。

 手作りブームで手芸材料店が都心進出

 ユニクロなどの安くてシンプルな服を買い、自分でデコレーションして楽しむ手作りがブームに。節約しながらも生活を楽しみたい消費者の志向を受けて、蒲田、吉祥寺、津田沼など都市のエッジで店舗展開していた手作り材料店「ユザワヤ」が新宿高島屋内や銀座など都心に進出、手作り人気を裏づけた。 

キンドルで変わるか、出版流通

 アマゾンの電子ブックリーダー「キンドル」が10月日本でも発売された。今のところ英語表記のみだが、読みたいときに本をダウンロードしてすぐ入手でき、本を置く場所もとらないと一部で人気になっている。ネット販売が増え、ただでさえ書店で本を買う人が減る中、製本した本を買うのでなく、テキストデータを買うという画期的な出版流通の変革が、書店に与える影響が注目される。

 
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