販売革新 
 
2001年3月号
 

総合業態の営業企画を立て直す7つの急所

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

1. 商品の前にまず店を売れ


 コンビニエンスストアとユニクロさえあれば日常生活にことかかない消費者が増えている現在、大型店を取り巻く環境は激変している。GMSのコンペティターはGMSだけではないし、百貨店のコンペティターは百貨店だけではない。そうした中で、今、GMSに必要なのは、ものを売る前に店を売ることであり、来店客数を増やすことではないかと思われる。来店客数が増えれば、商品が売れることは過去のデータが実証している。

店自体を売ることは営業企画のミッション(使命)ともいえる。しかし、現実には、食品、衣料品、リビング用品などの担当商品を必死になって売ろうとする商品部長はいるが、店をブランドとして必死に売ろうとする仕掛け人であるはずの営業企画が十分に機能していない店は多い。さらに、チラシやイベントの経費まで、商品部単位に費用として配分される厳しいコスト管理の元では、お客を店に来させるためのイベントや広告を打ち出す余裕もないところが多い。この結果、GMSでは思い切った営業企画が打ち出せず、じりじりと客数・売上げを落としているところが多い。まず、営業企画に人材と費用を掛けることが必要である。この場合のコストは経費ではなく、お客を呼び込むための投資と考えるべきである。

2今、何を売るかを明確にせよ

GMS、百貨店など大型店ではいずこも厳しい前年割れの状況が続いている。その中で、GMSはセールがセールを呼ぶ悪循環に陥っているように思える。しかし、今、安いだけではお客は来店しない。値段だけが目立つチラシは、お客の来店意欲をそそるだろうか?カードホルダーに対するポイントアップセールは頻繁に行われているが、果たしてどれだけの成果はあるのだろうか?ポイントアップの数値だけが大きく書かれたハガキが届いてもお客の心は動かないのではないか。昨年、GMSでは、ユニクロ・百円ショップの快進撃に刺激されて、ダイエーの88円ショップ、西友の98円コーナー、ユニーの100円コーナーなどワンプライスショップの展開がさかんに行われた。しかし、二番せんじの感は否めなかった。ワンプライスショップであれば専門の100円ショップの方が品揃えは充実しているものとお客は思うものである。

営業企画の仕事がはっきり見えるのはユニクロである。ユニクロは、「今、何を売りたいのか」をいつも明確に顧客に訴求している。ユニクロの店には多数のアイテムがある。しかし、ユニクロではシーズン毎に商品アイテムを絞りこんでクローズアップする。そして、マスメディアで集中的に訴求する。人々は嫌でもユニクロの名前を覚えてしまうし、ユニクロは今何を売ろうとしているのか知っている。

 GMSが今何を売ろうとしているのか、お客に伝わっているだろうか?チラシも総花的で絞り込まれていなければ、印象に残らない。マス広告はほとんどない状況では、店のイメージは希薄になる。その一方、記事ベースで、業績の悪化や、株価の下落などマイナスの情報ばかりが流されている。これでは、惰性で食品や生活雑貨の買物にいく他はGMSに「行こう」という気がおきないのが消費者心理ではないだろうか。「専門店のユニクロだからできる、多分野の商品を売るGMSでは中々商品を絞り込んで訴求できない」という事情はあるにせよ、いつ、何を売るかを絞り込み、顧客にわかりやすく伝えることが求められている。商品部門と販売促進部門をコーディネートして、これを推進するのが営業企画の役割である。

3. その企業「らしさ」が出た核ブランドをつくれ

 「確かに安いものはあるが、欲しいものがない」GMSがあまりに多い。実際、フリースジャケットなどは、ユニクロよりも安く出していても売れていないGMSもある。ユニクロの強みは、店・商品をブランド化していることにある。「ユニクロのフリースを買うのは自慢になる、少なくとも恥ずかしくない」と思う一方、GMSにあるフリースには目がいかないのが今の消費者なのである。GMSのフリースは、安くてもブランドの付加価値のない商品だからである。米国のチェーン、JCペニーは「アリゾナ」という看板ブランドで婦人・紳士・子供服のオリジナル商品を打ち出して成功している。最近、日本のGMSでもプライベートブランドを集約する動きが目立つ。いろいろなプライベートブランドを散発するよりも、核ブランドを集約して強化する方が、顧客にも分かりやすい。その時、店と核ブランドのイメージは一体化し、核ブランドを売ることが店自体を売ることに直結する。その意味で安いだけのプライベートブランドの時代は終わった。その店らしさを表すリーズナブルでクオリティのあるストアブランドの創造が求められている。ストアブランドを各商品部、バイヤーと調整しながら作り上げ、それを店の顔としてプロモートすることも営業企画の役割である。

4. モチベーション需要はきっちり掘り起こせ

「今、これを売ります」という店のメッセージが顧客のニーズにぴったり合えば、顧客は買物に出かける。それには、顧客が今、欲しいものは何なのかを知る必要がある。欲しいものがわかれば「あなたの欲しかったのはこれではありませんか?」と店からの提案ができる。特に季節毎に変わるモチベーション需要は、どの大型店の営業企画でも、それなりに注力しているポイントと言える。しかし、この点では、年初の福袋商戦にも端的に見られたように、やや百貨店の方がGMSより優勢の傾向である。百貨店の方がGMSと較べると、販売促進費等がどんぶり勘定のところが多く、消費者にとって面白い企画が目立つことも一因と思われる。企画にコストが掛けられないと、イベントなどはほとんどできないため集客もままならない大型店もあると聞く。リストラで人数もギリギリでやっているところが多く、良い企画があっても、日常業務に流されて気がついた時にはタイミングが遅すぎるということも多いようだ。

言い尽くされたことだと思うが、年間シーズンプラン、マンスリープラン、ウイークリープランを計画的にたてて、地域毎の季節変化、気候変化にタイムリーに合った営業企画を進めることがポイントである。もし、それができていないのならその原因を改めて見直し、人や予算も含めた改善が必要になるだろう。変化や提案のない売場にお客は行こうという気にはならない。

5. お客の声をきちんと聞け

 モニターの声を一応は活用しているGMSは多い。しかし、活用の仕方が中途半端だといつまでたっても、良い営業企画を生み出すことには繋がらない。特に、最近は経費節約のため、パート販売員をモニターにして参考意見を聞く店が多いと聞く。もちろん、売場を良く知る、パート販売員の声を聞くことは大切であるが、それだけで結果を導くことに問題がある場合がある。パート販売員の意見は確かに集まるが、その層が店の顧客を代表しているかどうか考慮する必要があるからだ。一般顧客のモニターを同時に行い比較してみると、パート販売員の嗜好や感覚には偏りがあることもある。経費がかからないという理由だけで、パート販売員をモニターに使うことが果たして有効かどうか検討する必要がある。実際ある郊外型百貨店では、一般モニターに去年のチラシを見せて意見を聞いたところ、社員モニターからは出なかった「こんなダサい商品じゃ行く気がしない」「もっとブランドものが欲しい」「色が足りない」などの貴重な意見が出た。その意見を取り入れてチラシを作ったところ、昨年と較べて同じ催事の売上げが大きく伸びたという。
お客が見えない店は、次の手が打てない。お客の声を的確に集めることが必要である。効果を考えるならば、多少経費がかかっても客観的なやり方で行った方が良い。

売場で接客時にお客から来る様々な情報をメモにして集め次の営業企画に生かすことは大変有効である。この面では先進的な百貨店の伊勢丹では、販売員が顧客の声を聞いてウオントスリップと呼ばれているメモを書きとめている。同社では、さらに、ウオントスリップの内容をパソコンにデータベース化し、速く、確かに顧客の声に対応する仕組みづくりを進めている。

顧客カードを発行し、購買履歴データを持つ大型店も増えている。どの顧客が何をいつ買ったかというデータから、様々な予測を立て、営業企画に生かすことも可能になってきた。このような顧客から得られる情報は営業企画にとって重要である。営業企画とマーケティングは緊密に結びつく必要があると思われる。

6.もう一度目利きを育てよ

 バイヤーにセンスのいい人がいなくなったといわれる。リストラで残るのは、勘定の得意なバイヤーが相対的に多いという話もある。食品でも若いバイヤーには目利きがいなくなったという。時代の変化がさせるものかも知れないが、バイヤーの商品を見分ける能力が相対的に弱まっていることも問題である。

消費者が欲しがるのは、価格・クオリティ・センス(味)の3拍子揃った商品である。価格設定はいいが、センスの良くない商品ではお客は見向かない。セールにおいても、センスが悪い商品がいくらバーゲンになってもお客は買わない。営業企画の成功・不成功は最終的には、一つ一つの商品の選択眼にかかってくる。この点で、新たなバイヤー教育の仕組みや、マーチャンダイジングディレクションの仕組み等の充実もポイントと言える。

7. サービスにもっと仕掛けを

 営業企画は、良いサービスを実現する仕掛けにも注力すべきである。いい商品といいサービスが揃って始めて顧客は満足するものだからである。例えば、お客様を名前で呼ぶことを実行している百貨店が最近増えてきた。カードで買物をすると、カードの名前を見て「ありがとうございました。○○様」と必ずあいさつするのは感じが良い。米国のウォルマートにハロウィーンの時期に行ったことがある。レジの店員がひょうきんな帽子をかぶったり、頬紅をピエロっぽくつけたり、ちょっとした仮装をして、お客を楽しませていた。このような販売サービスでの企画も、営業企画の一環として、もっと色々なことができそうである。行事や歳時記に合わせて品揃えだけでなく、サービスでもちょっとしたアイデアや工夫で顧客に楽しい買物の体験をさせることが大切である。このことがリピーターづくりに役立つであろうことは言うまでもない。

まとめ 指揮者の役割が求められている。

 仕入れや販売と違い営業企画の仕事は見えにくいし、効果もはかりにくい。しかし、オーケストラがコンダクターなしでは成り立たないように、営業企画の役割は、各所の専門家を束ねて、店を顧客にとってより魅力的で快適な買物ができる場所にすることにある。そのためには、顧客を知り、どんな顧客に、何を、どこで、いつ、どんな理由で、どのように売るかという5W1Hの戦略を商品部門、販売促進部門、売場との緊密な連動の中で組み立てて、それを分かりやすく顧客に伝える必要がある。しかし、現実には、営業企画と、現場との連動が中々うまくいっていないところも多いと聞く。店の中心顧客も売れ筋も中高年中心であるにもかかわらず、広告宣伝やイベントはヤング向けにズレている店もある。販売促進と、マーチャンダイジングのタイミングがずれて効果が上がらないことも多い。

営業企画は、各部門の独自の動きを、戦略的に方向付けていく必要がある。それを少しでも前向きに進めるためには、営業企画が店のあるべき姿についての確固とした方針を持つことが必要である。同時に、各部の動きを束ねるためには「顧客の声」をしっかり掴んで、説得力を持つことが必要である。仕入れ部門には取引先や競合店の情報は入りやすいが、顧客の本音はわからないことが多い。また売場には顧客情報が豊富にあるが、分析されていないことが多い。なにより、現場では、わかっても立場上、素直に聞けないことも多い。それゆえ、顧客の声、顧客の本当のニーズを掴むことは営業企画にとって重要なポイントである。それを店全体の共通認識に高め、タイムリーに顧客ニーズに合った「商品」「VMD」「サービス」「環境」「販促・広告」を打ち出すことが、再び客を店に呼び戻すポイントである。

 
 
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