社団法人日本マーケティング協会発行
 
 
マーケティングホライズン 2001年1月号 DISTRIBUTION’00 
 

キーワードは新しい買物価値の創造

 

(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子


2000年の流通業は、新旧交代の目立つ一年だった。そごうの民事再生法適用が一つの時代の終りを記す中、これからの流通業の方向を示す新しい動きが注目された。


■ 安さと目新しさで人気のアウトレットモール

 外資系デベロッパーのチェルシージャパンが手掛ける「御殿場プレミアムアウトレット」、「りんくうタウンプレミアムアウトレット」、三井不動産が手掛ける「ラ・フィエット南大沢」「ガーデンウオーク幕張」など、相次ぐアウトレットモールのオープンが行われた。売れ残り処理のためのアウトレット店を集めたアウトレットモールは、安いもの、意外な掘り出し物を探しながら家族やカップルが行楽気分を楽しめる場所として、人気を集めた。


■ 本格的ショッピングセンター各地にオープン

日本のショッピングセンターの草分け「ららぽーと」のスケールアップ、イオングループのイオン成田ショッピングセンター、イオン岡崎ショッピングセンター(ジャスコと西武百貨店・専門店による本格的2核1モール)、小田原市のダイナシティウエスト(ロビンソン百貨店・専門店)、南町田(東京都)「グランベリーモール」など本格的郊外型ショッピングセンターの開発が目立った一年だった。本格的郊外型ショッピングセンターの強みである量販店・百貨店・専門店の複合が利用者にとって新しい魅力となるかどうかは、立地に適合したテナントミックスにかかっている。


■ 外資系小売業カルフール上陸

 ウォルマートに次ぐ世界第二位の小売業、フランスのカルフールが12月幕張に一号店をオープンした。生鮮食料品、日用品、衣料品、家電製品など幅広い商品を販売する。国際的な商品調達網やメーカーとの直接取引を活かして低価格な品揃えを実現する総合型小売業の進出は、国内流通業にも大きな衝撃を与えるものと予測される。カルフールは2001年1月には南町田(東京都)、光明池(大阪府)に出店する予定で、2003年までに13店舗を出店する計画である。


■ 住民が主役の街づくり結実

旧同潤会代官山アパートの跡地に代官山アドレスが、住宅・商業施設・公共のスポーツ施設などを揃えてオープンした。代官山地区市街地再開発組合が建設したもので、地域住民が主体となった街づくりである。ソフト面を手掛ける「代官山ステキ委員会」はNPO法人として生まれ変わり、住民主導の街づくりを継続する。大手デベロッパー主体の大規模商業施設が人々を呼び寄せるべく、より洗練された施設づくりやテナントミックス、高度なマーケティングソフトを競う一方で、「地域住民による地域住民のための充実した街づくり」のモデルを示した。


■ 経験'型ショッピングに注目集まる

東京ディズニーランド隣に誕生したイクスピアリ、福岡のホークスタウンモール、東京お台場のアクアシティに隣接するメディアージュなどアミューズメント性の高い商業施設が話題を呼んだ。イクスピアリのイクスはExperience(経験)を意味する。「もの」に満ち足りた生活者にとってショッピングは、単にものを買うための手段ではなく、「そこでしか感じられない感動・満足」をもたらす経験でなければならない。話題を呼んだ渋谷パルコクアトロ内に出現した東大門市場は、韓国の東大門市場そのままを再現したテーマ性や、店との価格交渉が楽しめる点など、経験型ショッピングのバリエーションとも言える。ネット販売で人気を集めたネットオークションは、買えるまでハラハラ・ドキドキする経験の楽しさが人気を呼んだ。 


■ 再生に取り組む都市型百貨店

 そごうの民事再生法適用に揺れた都市型百貨店の中から、新たな巻き返しが始まった。春には、名古屋駅の新ランドマーク「JRセントラルタワーズ」の中核として、東急ハンズと組みJR名古屋高島屋がオープンした。本格的都市型百貨店としての品揃えの充実に加えて、顧客満足日本一を目指しシューフィッターやソムリエなど売場毎にスペシャリストを配し、各フロアの休憩スペースを充実させるなど工夫をこらしている。三越は、閉鎖された多摩そごうの跡地に、すぐさま三越多摩センター店をオープンさせた。横浜では、ユニクロやブーツ、大塚家具などの有力専門店を入れ、食品を1.5フロアから2フロアに増やす大胆なリニューアルを行った。東急百貨店東横店は、専門店モール・マークシティ渋谷の開業に合わせ食品街「東急フード・ショー」をリニューアルオープン、すべての店に厨房を設置し、出来立て感の演出に注力している。西武百貨店は、昨年の東戸塚オーロラモールに続き、イオン岡崎ショッピングセンターに出店し、郊外型ショッピングセンターの核となる新フォーマットの百貨店業態の確立にいち早く取り組んでいる。伊勢丹は新宿本店の地下2階に、新しい洋服・雑貨・CD・花・カフェなど多分野の商品をライフスタイル編集したクロスマーチャンダイジングの新フロア「BPQC」を開設し話題を呼んだ。


■ 快進撃続くユニクロ・ダイソーに、あやかり商法盛ん。

 2000年も「安さ」は消費者にとって一番の魅力だった。春はGジャン、夏はTシャツ、秋はパンツ、冬はフリースと「今、買うものはこれ」というメッセージを強烈に売り込む「ユニクロ」は品番数を絞り込む単品大量販売で、他社の追随を許さない「品質と価格のバランス」を実現し、快進撃を続けた。横浜三越をはじめ、港北東急百貨店、ライフ大口店(横浜)など百貨店・量販店でも「ユニクロ」を店内に導入し、集客を狙うところが続々現われ、「ユニクロ」パワーを見せつけた。
百円ショップの大創産業は超大型百円ショップ「ザ・ダイソー百円館ギガ町田店」をオープンするなど、自社開発の新商品を次々に投入し、顧客を飽きさせない工夫で好業績を続けた。100円ショップの人気にあやかろうと、量販店では、ダイエーの88円ショップ、西友の98円コーナー、ユニーの100円コーナーなどワンプライスショップの展開がさかんに行われた。


■ ネット販売の主流は"クリック&モルタル"

最大手「楽天」に代表されるベンチャー事業のイメージが強かったネット通販に、今年は続々大手企業が参入した。三井不動産が電子ショッピングモール「キュリオシティ」を開設したのをはじめ、百貨店の三越、専門店のユニクロ、無印良品など、有力な店舗小売業がネット販売に参入した。スーパーでは西友・マイカルがネットスーパーに参入した。松下電器は既存の系列店を活用するネット販売を立ち上げた。既存の店舗網を持つ小売業の参入が目立つネット販売には、リアル店舗(モルタル)とバーチャル店舗(クリック)の相乗効果を狙う動きが強まった。
ネット販売の草分け、米アマゾンドットコムの日本語サイトのオープンや、富裕層・中高年齢層・女性などターゲットをセグメントしたネット販売が多数登場するなど、ネット販売は新たな展開を始めている。


■ 小売業の銀行業参入始まる

昨年来、銀行業参入を表明していたイトーヨーカドーとセブンイレブンは開業に向けて「アイワイバンク銀行」(仮称)の免許を金融再生委員会・金融庁に予備申請した。小売と金融の融合により、「店頭でのキャッシュレス決済」「個人小口ローン」「インターネット決済」などの顧客サービスを強化する。業界の枠を越えて既存銀行のリテール(小口金融取引)分野にも、今後影響することが予想される。

 
 
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