社団法人日本マーケティング協会発行
 
マーケティングホライズン 2000年10月号
 

シニアに的を絞り成功

 

(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子


百貨店激戦区新宿で、今年4月まで13ヶ月連続対前年実績を上回る健闘を示したのが京王百貨店である。
健闘の要因は、ヤング向けファッションや高級ブランド戦略によるものではなく、地道に固定化した50代以上のシニア客に圧倒的な支持を得たことにある。

同デパートのドル箱は4階のミセス向け婦人服売場である。「新大衆百貨店」を標榜する同社は従来の百貨店価格より3割安い自主開発商品「ポピュラープライス」を強化した。その上、中高年の体型に合わせた商品を充実させた。その結果、4階に全国一の売上げを誇るミセスショップを多数生み出した。


■ マーチャンダイジングと顧客囲い込みの2面戦略で成功


1996年に高島屋が新宿に開業以来1999年度までの5年間で、高島屋を除く4百貨店(伊勢丹、三越、小田急、京王)は年間の売上高を計604億円減らした。その中で、京王百貨店は早くから、新大衆百貨店を旗印に戦略的なMD刷新に着手した。元々商品提携をしていた高島屋の進出により、独自性を作ることが生き残りの道ととらえたためである。そこで、同店が得意としてきたミセス層へのマーチャンダイジングの強化を行なった。50代60代女性は、これまで業界が切り捨ててきた層である。この層は、体型変化に合った無理なく着られる手頃な価格の商品を求めている。同時に、質の高い、落ち着いた華やかさのあるファッションを求めている。しかし、百貨店は、ファッション誌などメディアの注目を浴びやすい、回転の速いヤングやキャリアのファッションに力を入れるところが多く、50・60代女性に本気で取り組むところは少なかった。

 50代60代の女性は実は購買力も高く、ストアロイヤルティの高い顧客層である。京王百貨店では、品揃えの特化と同時にパスポートカードの獲得による顧客の固定化を計った。セール商品も含めて5%引き、現金払いでも5%引き、年4回10%引き特別優待、割引に加えてポイント制による買物券還元、来店しただけでポイントアップなど同社のカード特典は、他社と較べても、充実している。その結果、カードホルダーも50万人を超し、顧客データの分析をマーチャンダイジングに活かしている。今後はカード顧客へのパーソナルなアプローチも計っていくとしている
婦人服だけでなく、シニア向け紳士洋品、ウオーキングシューズなどシニアが関心の高いライフスタイルを切り口にした売場の充実を計っている。

 業界で評価の高い新大衆百貨店・シニア囲い込み路線を推進した川村六郎社長は、6月に舵取りを村山慎一社長にバトンタッチした。京王百貨店はこの秋から、若返りを図るべくヤング・キャリア強化策にも注力している。ミセスに偏りすぎたマーチャンダイジングの修正を計る狙いと見られる。新しい試みが、どのような結果となるか注目される。

 
 
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