社団法人日本マーケティング協会発行
 
マーケティングホライズン 2000年7月号
 

快進撃支える新マスマーケティング戦略

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

ジュアル衣料専門店ユニクロを展開する製造小売業ファーストリテイリングは1999年8月期売上高1110億円、経常利益141億円を達成。その後も、1900円フリースジャケットを850万枚売るなどのヒット商品を出し、2000年8月期の業績見通しを売上高2250億円と前期比約2倍(経常利益540億円、前期比3.8倍)に上方修正した。ユニクロ、しまむら、良品計画は、小売業好業績「御三家」と呼ばれているが、中でも、ユニクロの急成長ぶりは群を抜いている。6月現在、株価では、しまむら、マツモトキヨシ、セブンイレブンを抜き流通関連銘柄のトップにある。
■ マーケティング視点から見たユニクロの成功要因とは
ユニクロは11期連続の増収増益企業で、以前からカジュアル衣料業界では注目されていた。しかし、数年前までは郊外安売り店のイメージが強かった。店舗数拡大の影に、既存店前年割れの時期もあり、1997年には新業態ファミクロ、スポクロを展開し、早々に撤退したこともある。しかし、1998年秋から、既存店売上高がプラスに転じ、昨年秋から、急成長が始まった。その背景には、徹底した合理主義経営や、リスクを負う生産販売システムによる良質な物づくりなどの経営手法が基本にある。
それに加えて、マーケティング視点から見ると、次の4点が注目される。
(1)鮮やかな、ブランドイメージチェンジ
郊外型チェーンから脱皮し、1998年11月原宿店開設など都心への進出をする中で、米国の広告会社ワイデン&ケネディ社と提携し、チラシ一辺倒の広告戦略から、テレビ・新聞・雑誌の複合的な宣伝戦略に切り替えた。その結果、安売り店から、「安くて価値あるブランド」へのイメージ転換に成功した。フリース、Gジャン、Tシャツと続く、アイテム訴求の広告は、人々に「今、何を売りたいか」をわかりやすく示し、ブランドネームを一気に浸透させた。
(2)一貫した商品コンセプト
イメージこそ大きく変わったが、ユニクロの商品コンセプトは、過去10年間大きく変わっていない。一貫して、「それなりにトレンドを押え、安く、品質のいいカジュアルウエア」を販売してきた。生活者の定番カジュアルへのニーズが増大した時期と、新イメージ戦略を仕掛けたタイミングが絶妙で、爆発的なヒットに繋がった。
(3)顧客接点重視
ABC(オールベターチェンジ)改革と呼ぶ、「本部主導型経営から店舗自立型経営への移行を目的とした全社的意識・行動・仕組みの変革運動」を進め、顧客接点である店舗を重視する組織運営に力を入れている。返品・交換などで、店頭から得られる顧客の声や、社外モニター、Eメールなどからの顧客の声を、製品開発に反映させている。
(4)新マスマーケティング
品番数を絞り込む単品大量販売で、他社の追随を許さない「品質と価格のバランス」を実現している。セグメントされた市場にしかアピールしない商品は扱わず、幅広い顧客層をターゲットにしている。「マスから個へ」という、時代の流れから見ると"逆張り"とも言える戦略である。幅広いマーケットを狙うユニクロの行き方は、ある時点で限界に来ることが予想される。その時、ユニクロが、再度どのような戦略に出るのかが、興味深い。

 
 
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