社団法人日本マーケティング協会発行
 
マーケティングホライズン 2000年2月号
 

熱い火花を散らす電子商取引競争

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

99年流通業の動きの中で、イトーヨーカドーの銀行業参入表明は特筆される出来事と言える。既に、英国ではテスコ、セインズベリー、セーフウエーなどの大手スーパーマーケットが銀行業に参入し、得意のローコスト経営と顧客満足度重視のサービスで、従来の銀行以上に高い利用者の評価を受けている先例がある。

ソニーもネット銀行に名乗りを挙げるなど金融業への相次ぐ異業種参入への動きは続いている。金融監督庁・大蔵省など関係官庁の対応には先行き不透明な部分があり、異業種参入の実現には紆余曲折が予想される。しかし、グローバルな潮流の中で、利用者にとってもベネフィットの高い異業種の金融業参入を支持する声は高い。

イトーヨーカ堂グループの店舗ネットワークはセブンイレブンを含めて9300店を数えている。このような店舗ネットワークを持つ流通業が銀行業に進出すれば、人々は、日常の買物に出かける場所で銀行の用事を済ますことができる。生活者にとっては流通業の銀行進出は利便性という面でメリットが高い。

流通業にとっては買物と銀行利用の両面から顧客の来店頻度を高めることで売上げ向上が期待される。同時に、小売りと金融の両面から顧客データベースを構築でき、それにより新たなマーケティングノウハウ獲得へのシナジー効果が期待される。

今年に入って、さらにセブンイレブンはソニー、JTB、ぴあなど7社と組む電子商取引の新会社設立を発表した。各業界のトップ企業を集めた強者連合を作り、店舗網と仮想店舗との相乗効果による幅広い品揃えとサービスの提供を行なうとしている。銀行業務参入は、この電子商取引構想との連動も視野に入れた計画と推測される。
一方、ファミリーマート・サークルケイ・サンクス・ミニストップ・スリーエフの5社も電子商取引で提携して新会社を設立することを発表している。5社合わせて12500店というセブンイレブンを大きく上回る店舗ネットワークを生かそうとするものである。

ここにきて、電子商取引による店舗不要論は影をひそめた。電子商取引を成功させるには、商品配送と代金決済がポイントとなるため、既存店舗網を持つコンビニエンスストアなどの活用に各業界の注目が集まっている。
既に築き上げた店舗網を持つ強みを生かす新事業構築や異業種との提携が流通業に新しいチャンスを作り出そうとしている。

流通業は今、物販だけでなく、金融を含めたサービスの幅広い提供へと乗り出し始めた。
「物」消費から「サービス」消費へと変化する生活者への対応に、ようやく店舗小売業も追いつき始めたと言えるのではないだろうか。

 
 
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