社団法人日本マーケティング協会発行
 
マーケティングホライズン 2000年1月号 マーケティング白書 DISTRIBUTION’99
 

<変化への挑戦>がキーワード

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

未来型商業施設の開発、インターネットショッピングとコンビニエンスストアの連携、新たな価格価値の提供など、変化に挑戦しつづける流通業の活躍が目立った一年だった。

■ 21世紀を予感させる商業施設続々登場

 99年は、様々な新しいコンセプトの商業開発が生まれた。日本最大級のエンターテイメント型大型複合商業施設「マイカル小樽」、脱量販店の新しい形態として注目を集めた「イトーヨーカドー葛西リバーサイドモール」、臨海副都心に出来た女性のためのテーマパーク「ビーナスフォート」、西武百貨店・ダイエーの2核モール「東戸塚オーロラシティ」、横浜みなとみらい21の「ワールドポーターズ」「横浜ジャックモール」の相次ぐ開業。12月渋谷にオープンしたマルチメディア館「キューフロント」など、続々と、新しいコンセプトの商業施設がオープンした。新しい商業施設は従来のものにないテーマ性・エンターテイメント性などで既存商業施設と差別化しお客を集めた。これらの新しい商業施設の登場は、21世紀には、物を売るだけでなく楽しい時間や豊かな気分をどう提供していくかが商業開発に問われていることを予感させた。


■ 外資系小売業の進出続く


 九州の郊外型ショッピングセンター「トリアス久山」に米国の会員制安売り店コストコが上陸した。またフランスの最大手スーパー、カルフールが2000年に幕張に進出することが決まるなど、SCM(サプライチェーンマネジメント)をバックにした世界的な小売業の相次ぐ日本進出が注目を集める。また99年にはイギリスから大手ドラッグストアの「ブーツ」が、フランスからLVMH(ルイビトンモエドヘネシー)傘下の化粧品店「セフォラ」が進出し、日本のドラッグストア、コスメティック業界に衝撃を与えた。外資系小売業の小売りがメーカーに対してイニシアティブをとる売り方は、今後他の分野にも波及することが予想される。


■新価格破壊のインパクト強し


 11月はじめにセブンイレブンを始めとして大手コンビニエンスストアがビールの一斉値下げを行なった。従来、大手コンビニエンスストアでは食品、ビールなどの主力商品はメーカー希望小売価格に近い価格で販売されてきた。そのコンビニエンスストアが安売りを始めたことは、酒販店に大きな衝撃を与えた。99年中間決算で増収増益を果たしたコンビ二エンス業界だが、その主な要因は新規出店によるもので、既存店の伸びは低く、前年を下回るところも出た。そのような中、安売りは有効な起爆力と捉えられたと言える

カジュアル衣料では、ファーストリテイリング「ユニクロ」の2900円ジーンズ、1900円フリースジャケットが快走した。ユニクロのジーンズは日本製の素材、縫製加工は中国の協力工場で行い、量をまとめてコストダウンを実現している。その結果「ユニクロ」の99年8月期売上高は直営店ベースで前期比34.6%増を達成した。同様に、世界的な調達網から戦略的に「いつも安い商品を提供できる」仕組みを作り上げた婦人服の「しまむら」や「無印良品」なども好調を維持している。

店舗数拡大によるバイイングパワーを裏付けに、価格破壊とも言える安さを実現した元気な流通業の活躍が目立った。


■専門店チェーンの台頭


百貨店・量販店など総合型品揃え業態の不振の一方で、大型専門店チェーンの元気さが目立った。
新宿三越南館が大手家具チェーン「大塚家具」に、京急百貨店が「ヨドバシカメラ」「マツモトキヨシ」に店舗の一部を賃貸するなど、百貨店にも大手専門店チェーンが進出しはじめた。
新開発の商業集積には、ジャスコ系のスポーツオーソリティ・ルームズツーゴーなど専門分野に特化した大型店チェーンがあちこちに顔を出した。チェーン化の流れは、インターネットショッピング以上に産業化する小売業の大きな潮流と言える。

米国では、どこのショッピングセンターに行っても、ギャップ・セフォラ・スターバックスだらけなことを揶揄する「ギャフォーバックス現象」という言葉がある。99年の日本の流通業にもその一端が見え始めている。


■カリスマ販売員、話題を呼ぶ


渋谷109生まれの「エゴイスト」「カパルア」「ココルル」などのセクシーカジュアルファッションが全国で旋風を巻き起こした。「いま新鮮なものを今つくる」という短サイクルの商品づくりで若者に人気を集め、大手百貨店伊勢丹のヤング売場、柏丸井の新業態VAT、名古屋の百貨店「丸栄」、仙台十字屋などに売場が導入されると同時にカリスマ店員が話題になった。

モデルばりのスタイルの良さと、説得力のあるファッションセンス、接客マナーの意外性のある丁寧さが好評。カリスマ店員が一日に何度も着替える試着販売など、既存の小売店にとっては「目からうろこ」のノウハウも評判を呼んだ。カリスマ店員に売場や商品開発をまかせて、やりがいを与える商法にも注目が集まる。


■インターネットショッピング、生活の中へ


生活の様々な分野にインターネットショッピングが広がりを見せた一年だった。99年版通信白書によると、インターネットショッピングの市場は、8年度(9年1月)に285億円、9年度(10年1月)に818億円と、着実に拡大を続けている。書籍の販売では、ソフトバンク、ヤフー、東販、セブンイレブンの4社は書籍のインターネット通販で提携し、99年の11月からイー・ショッピングブックスを立ち上げ、コンビニエンスストアがネットショッピングに参入することで話題を呼んだ。セブンイレブンの参加により、配送負担を押さえ、現金決済ができる。対する日販では、秋から受注した書籍を注文客が書店に取りに行く方式のインターネット販売を始めた。既存の書店の店舗網を生かすインターネット販売への取り組みである。玩具では、バンダイ・タカラ・トミー・エポックの大手4社・卸ハピネット・ソフトバンクなどと組み「イーショッピングトイズ」を設立。「イーショッピングブックス」同様、セブンイレブンで現金決済、商品受け取りができることをうりにしている。

より身近なところでは、惣菜店大手のロックフィールドがインターネットによる受注を開始。ホームページで注文する商品と来店時間を入力すると、時間に出来たての商品を受け取れる仕組みである。また、ベンチャー企業のアートネットボックスでは,11月にオンラインスーパー「ココデス」を開店。ホームページで注文を受け、翌日配送する。ホームページ経由でリンクした顧客が買物した場合、売上の一部を報酬として支払う顧客紹介システムを導入するなどして顧客拡大を狙う。

 通販各社もインターネット販売に力を入れ初めた。通販大手のセシールは、インターネット販売の拡大のため、リースパソコンの販売に乗り出した。リース販売したパソコンからセシールの商品を購入すると特典を与える。
リースパソコンや格安パソコン、インターネットの出来る携帯電話などの普及も相まってインターネットショッピングはいよいよ生活の中に定着を始めた。

 
 
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