社団法人日本マーケティング協会発行
 
マーケティングホライズン 99年12月号
 

境界が消える?百貨店と量販店

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

百貨店と量販店の商品の棲み分けがくずれはじめている。

婦人服・紳士服などのアパレル商品については、従来は、メーカーサイドでチャネル政策を明確に分けてきた。そのため、百貨店と量販店の商品にはバッティングが無く、きっちり分けられていた。しかし、ここに来て、量販店に百貨店ブランドが導入されるケースや、地方百貨店に量販店向けアパレルの商品が入るケースが増え、百貨店と量販店の商品に境界線がなくなってきている。例えば、今年7月にオープンしたイトーヨーカドーのショッピングセンター「葛西リバーサイドモール」には、百貨店販路を主力とするブランドが数多く出店して業界の話題となった。その一方、郊外型百貨店や地方百貨店の中には、自主マーチャンダイジングの売場を中心に量販店系アパレルメーカーと組んで価格価値のある商品を展開する動きが始まっている。

また、店舗内にヨドバシカメラやマツモトキヨシなどの異業態を導入する百貨店も現れ、百貨店・量販店からイメージされる店舗の姿からはみだす店が増えてきた。

 小売業界では、百貨店協会に入っていれば百貨店、チェーンストア協会に入っていれば量販店として見る習慣がある。しかし、消費者から見ると、総合大型スーパーと百貨店とは業界の人々が考えるほど、別のものとは見られていない。特に地方に行くと、総合的品揃えの大型スーパーを百貨店と呼んでいる人は多い。

品揃えについては、「スーパーの方が安い」「百貨店は高級品まである」という一般的なイメージがある。しかし、百貨店といっても都心店から郊外店・地方店まで幅広く、中にはスーパーと同質の客層を狙っている店も多いのが実態である。

 それでも、今までは、百貨店と量販店には、取引先の違いという差が大きくあった。しかし、メーカーはより一層の販路の拡大を目指し、百貨店系アパレルは量販店に、量販店系アパレルは百貨店に進出するということになると、最後まで残っていた商品の違いも薄れてくる。

今、アパレルに関しては、専門店が好調であるのに比べて、総合的な品揃えの百貨店・量販店の業績は、ますます厳しい状況を迎えている。その中で、商品面でも両者の境界がなくなるということは、ますます、百貨店・量販店という業態レベルの競争ではなく、店舗レベルの競争時代になることを意味している。

 この傾向が進めば、消費者の買物意識からも、高級品やハレの商品は百貨店で、日常品やケの商品は量販店でという区切りが薄れていくに違いない。そこで重要になるのは、個々の店舗のブランド力である。「OO店でなければ」という顧客のストアロイヤルティを個々の百貨店・量販店が獲得することができるかどうかが問われている。

 
 
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