社団法人日本マーケティング協会発行
 
マーケティングホライズン 99年8月号
 

火のついたSCM入り競争

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

SCM(サプライチェーンマネジメント)は日本の企業活力を復活させる切り札と見られている。「NECがSCMにより在庫半減」「角川書店、EDIで出版の旧習打破」「伊勢丹・阪急共通の単品管理システム稼動」等々、ここに来てSCMの具現化への動きが様々な業界に広がっている。その中で、大手日曜雑貨メーカーP&Gが10月から新取引形態への移行を発表し衝撃を与えた。新取引条件は最低発注単位を従来の20ケースから100ケースに引き上げ、受発注をすべてEDI(電子データ交換)にするというものである。この条件を満たせば、小売り、卸ともに同じ価格で製品を納入する米国型の取引形態を導入する。大手小売業は直接取引きにより仕入れコストを圧縮できるため、受け入れる意向を示している。その一方、電話やファックスで受注しているような小規模卸では、発注単位の引き上げによる在庫負担増やEDI対応の設備投資に耐えられないところも出てくる。日本の複雑な他段階流通が世界的なSCMの流れの中で変わっていかざるを得ない局面を迎えていると言える。

 SCMは「商品供給に関わる連鎖・サプライチェーンの全体最適化を顧客のために計る経営管理」を指す。SCMに先立ちQR(クイックレスポンス)、ECR(エフィシエントコンシューマーレスポンス)などが、メーカー・流通双方で情報を共有することにより在庫削減を図る仕組みとして登場した。QR、ECRを包含し、全てのビジネスプロセスを消費者のために全体最適に向けて改革しようとするのがSCMである。

 SCMという言葉がようやく日本に定着しはじめた今年、シカゴで行われたQR大会ではCPFR(共同計画、予測、商品補充)という新たな言葉が飛び出した。CPFRはメーカーと小売業がパートナーシップを深め、「共同で戦略を立て、予測し商品を効率的に補充する」という手法を意味する。CPFRでは、企業間のパートナーシップはより緊密でなければならない。そのため、コンプライアンス(承諾)とインターネットがキイになると言われている。

 この5月に日本小売業協会のSCM米国視察に参加し、CPFRの話を聞いた。この視察には日本のメーカー・小売業から多くの社員が参加していたが、「コラボラティブ」という言葉に質問が集中した。「利害が違うメーカーと小売業が、どのようにして共同して計画するのか」「損が出たらどうするのか」という疑問である。日本では、系列間のサプライチェーンマネジメンはいざ知らず、異なる企業間のコラボレーションについてはこれからの学習が必要な課題であると言える。

 同時に、何につけても「わが社流」「うちは特殊」と考える企業が多い日本では、取引条件の明確化や業務の標準化など、SCM実現のためにクリアすべき課題は多い。

 しかし、今やSCMの流れについて行けないということは、淘汰される側に回ることを意味する。きしみをたてながら、日本の非効率な流通にもメスが入ろうとしている。

 
 
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