社団法人日本マーケティング協会発行
 
マーケティングホライズン  2003年1月号 DISTRIBUTION’02 
 

キーワードは"安心”と”センス”

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

 2002年の流通業界は西友・住友商事とウォルマート提携が発表され、流通再編の動きが活発な一年だった。食品偽装問題が多発し、小売業では安心を保証する商品表示に注目が集まった。デフレ下で安さを武器にした小売業が引き続き人気を集める一方で、センスある独自の編集力で商品を揃えるセレクトショップに注目が集まった。

■ ウォルマートと西友包括提携

 3月、西友とウォルマートの包括提携が発表された。ウォルマートは5月に西友の第三者割当増資を引き受け段階的に出資比率を引き上げて、2007年までに発行済み株式の66.7%を保有する権利を持つ。ウォルマートは12月に追加出資し、株式の34%を保有する筆頭株主に。世界最大の小売業の日本進出は今までの外資系小売業の参入以上に日本の小売業に、商品調達面、情報技術面で大きな変革を促すと見られ、小売業だけでなく、メーカー、卸売業、情報システム業も西友・住友商事・ウォルマート連合の今後の動きを見守っている。

■スーパー業界 2強時代鮮明に

デフレ下で、マイカルをはじめ破綻企業が相次ぐなか、8月中間決算で、イトーヨーカドーは178億円、イオンは110億円の単体利益を上げた。イオンはマイカル、寿屋などを支援、いなげやの株取得により筆頭株主に踊り出るなど規模拡大路線を積極的に進めた。イトーヨーカドーは赤字のダイクマをヤマダ電機に売却するなど収益重視の経営を図っている。今後はイオン・イトーヨーカドーの2強とウォルマートの後ろ盾を得た西友の3グループを核にスーパー業界の再編が進むと見られている。

■百貨店 好調店のキーワードは地域密着

 昨年は、そごうなどの破綻による競争緩和効果、デパチカブーム・高級ブランド人気に乗ったリニューアル効果で復調の光がさした百貨店業界。今年は、その効果も一巡し、苦戦した。その中で、11月に60ヶ月対前年同月比売上増を達成した上大岡京急百貨店は、地域に密着した品揃えやサービスに力を入れ、厳しい業界の中で注目された。

■地域最低価格で驀進のヤマダ電機

 3月決算で売上高、経常利益ともにコジマを抜き家電量販店のトップにたったヤマダ電機は、地域最低価格を標榜する安さで驀進。イトーヨーカドーグループのダイクマ買収により出店ペースを加速し、04年3月期には専門店として初の売上高1兆円を目指す。

■ 低価格子供用品チェーン快進撃

 子供服・用品を扱う西松屋チェーンは関西を地盤に全国展開を進めている。低価格で約2万アイテムの出産準備用品、ベビー・子供の衣料、生活実用品を扱い、ロードサイドへの積極出店とプライベートブランド戦略をベースに2月決算では28.2%の増収、8月中間決算では前年同期比30.1%とハイペースの成長で注目された。安さだけでなく、買いやすさ、立地のよさを追及し「ベビー用品」のコンビニを目指す。

■ついに出た!90円の靴

 靴の通信販売で知られるヒラキは、昨年11月に180円スニーカーを5色、22サイズで出し、業界をあっといわせた。アジアへの生産委託と10万足単位の大量発注で低価格を実現。今年11月には100円を切る90円スニーカーを通販会員向けに50万足売り出す。品質を落とさず、低価格を実現したことが、顧客に支持された。

■セレクトショップ快走

独自のセンスで国内外から複数の衣料ブランドを仕入れて販売するセレクトショップが人気を呼んだ。ビームス、シップス、ユナイテッドアローズ、トゥモローランド、ベイクルーズなどが店舗を拡大。主なセレクトショップを一堂に集めた4月の大阪・梅田イーマの開業は注目を集めた。セレクトショップのコーナーを設ける百貨店や、セレクトショップ的な展開を図るリビング専門店が増えるなど、セレクトショップの影響が広がった。感性の高い消費者に向けて、一味違ったセンスある商品を揃えた店が求められているといえる。

■丸ビル人気

9月東京駅前にオープンした新生丸ビルに注目が集まった。クラシックな旧丸ビルのデザインを生かして地上37階建てに高層化し、地下1階から4階に物販店100店、5・6階と35・36階に飲食40店舗が入った。新生丸ビルの誕生により、数年前から開発されてきた丸の内仲通りの回遊に核ができた。開店人気で、エレベーター、エスカレーターには行列ができ、レストランはどこも満員の盛況ぶり。丸の内の地主である三菱地所には「街ブランド室」があり、丸の内のブランド化に力を入れてきたマーケティング活動の成果があらわれたといえる。

■ステーション・ルネッサンス

2月、東京 上野駅はステーション・ルネッサンス計画によって甦った。ニューヨークのグランドセントラル駅をモデルにしたという大改修は、どこからが駅でどこからが駅ビルか意識させないほど駅と駅ビルが一体化して楽しいひとつの街になった。この改修で上野駅のイメージは大きく変わった。上野駅だけでなく、好立地を生かす商業施設として、駅ビルが変わりつつある動きも注目された。

■ジュニアに熱い視線

9歳から14歳のローティーンは、少子化で頭数は少ないが、親がバブルの絶頂期の消費世代でバブルジュニアとも呼ばれ、お洒落感覚にうるさいのが特徴。子供服メーカー「ナルミヤインターナショナル」はこの世代向け商品をいち早く開発し、人気を集めている。4月にはローティーン向けのファッション誌ニコラを出版する新潮社と伊藤忠商事が提携し、東京・原宿に直営ショップ「ニコラ」をオープン。7月にオープンした東京・町田の109町田はティーンズに特化した売場作りを行い注目された。 

■「トレーサビリティー」で安心

 食品の偽装問題や偽ブランド問題が相次ぎ、小売業にも管理責任が求められるようになった。大手スーパーでは生産者名や栽培方法、出荷日時までデータを明示した食品を販売しはじめた。食品の「トレーサビリティー」(生産履歴の追跡)を明示する動きは農産物や畜産物から水産物にも広がった。イオンでは7月、国内の水産物で初めて、有機食品の認証団体が認めたウナギの蒲焼を発売、イトーヨーカドーでは「生産者の顔が見える養殖魚」のパネルを新規オープンした千葉・八千代店に掲示するなど「安心」をアピールする動きがひろまっている。

 
 
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