社団法人日本マーケティング協会発行
 
マーケティングホライズン 2002年10月号
 

個性化する駅ビル

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

■従来駅ビルと言えば個性のない商業施設の代名詞のような存在であった。しかし、最近はテナント構成に独自性を発揮したり、エンターテイメント施設を融合させたりした個性的な駅ビルが増えている。例えば、ルミネ新宿は2001年4月から「ルミネ・ザ・よしもと」を館内に導入している。その効果もあって地方から客が集まる傾向も強まっているという。今年5月からは物販店の営業時間を1時間延長し、全館午後10時まで営業している。テナントの入れ替えや不振店の改装などによるテコ入れも頻繁に行われており、若い人に人気のある鮮度の高いテナントを集めている。また、CS(顧客満足)向上に注力し、毎回テーマを決めて継続的に取り組んでいる。こうした活動の結果、ルミネ新宿店は今年8月で18ヶ月連続の増収を続けている。

小売業が全体に不振のなか、駅ビルは変身し、新しい商業拠点として力を蓄えつつある。今年2月にはJR上野駅が大改装され、構内にレトロとモダンを併せ持つ「アトレ上野」が誕生した。開業後上野駅の乗降客も増加しており、駅のイメージそのものが大きく変わった。いままでの中高年一辺倒の客層から若い女性の集まる姿が目立っている。テナント構成も若い人に人気のファッション店や雑貨店、地域性のある下町情緒の店を集めた「粋品小路」や文化性のあるギャラリー、飲食ゾーンなどを複合させている。ターミナル性を活かし高級食料品店の「ザ・ガーデン」が導入されていることも話題を集めた。高級スーパーの成城石井も駅ビルに積極的に進出しており、駅のスーパーはいまや「駅スパ」と親しまれ、仕事帰りのキャリアウーマンなどの心地よい立寄りスポットになっている。


■駅ビルは言うまでもなく、交通アクセスが非常によく商業施設としては最高の立地にある。駅に集まる人々の潜在購買力を吸収する余地は駅ビルにはまだまだ大きいといえよう。従来、駅ビルは鉄道業の副業的な事業として位置付けられていたため、小売業を主とする事業主体が運営する店舗施設と比較して、消費者ニーズの変化の先取りや顧客満足への取り組みが弱かった。しかし、JR各社を始めとして鉄道業では新たな収益源として駅構内開発や駅ビル開発など非鉄道部門に力を入れはじめている。
同時にオフィスビルにおける商業開発も活性化している。この秋開業して話題の三菱地所が手掛けた新生丸ビルでも商業・飲食施設が大きく強化された。鉄道業・不動産業など異業種からの商業開発攻勢は、消費者にとっては選択肢がひろがるメリットがある一方で、小売業の地域間競争の熾烈さを加速させている。

 
 
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