社団法人日本マーケティング協会発行
 
マーケティングホライズン 2002年1月号 DISTRIBUTION’01
 

キーワードは買物の楽しさとライフスタイル提案

 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子

2001年の流通業界は9月マイカル破綻の激震が走るなど大きく揺れ動いた一年だった。その中で百貨店復調や高級スーパー快走など新しい流れが注目される。

■ 外資系流通業明暗分ける

 2000年12月に幕張にオープンしたフランスの大手流通業カルフールは1月東京南町田、大阪光明池にも開業し、3店舗となった。黒船の襲来とも騒がれ、鳴り物入りで上陸したカルフールは日本市場を捉えきれず苦戦している。10月には藤沢出店の撤回も明らかになり、品揃えの見直しなど軌道修正を迫られた。
東京・横浜などに4店舗出店した英国のドラッグストアチェーン、ブーツも撤退を決め店舗を閉鎖した。
 その一方で外資系高級ブランドの出店意欲は衰えを知らない。銀座にはメゾンエルメスが6月オープン、原宿のビブレ跡地にはシャネル、グッチなど海外高級ブランドを集積したエスキス表参道(写真)が9月オープンするなど勢いがとまらない状況である。消費の2極化が外資系小売業の明暗を分けている。希少性のある高級ブランド商品には陽が当たり、どこでも手に入るコモディティ商品を扱う小売業には参入のハードルは高い。

■ 百貨店の復調

 高級ブランドの大規模な導入、戦略的な平場づくり、食品売場の充実等の改装効果により百貨店収益が回復し始めた。消費2極化の中での高質消費の浮上、人口の都心回帰などが百貨店売上げにプラス効果をもたらした。地域によってはそごうなど閉鎖店舗からの顧客流入も寄与している。

■居抜き出店が今年流

 昨年6月からの大規模小売店舗立地法施行の関係で、2月以降の出店は大幅に減少。その中、2001年唯一の大型百貨店オープンとなった1月の伊勢丹新立川店が注目された。新規出店は少なかったが、近鉄撤退跡に吉祥寺三越、コトデンそごう跡に高松天満屋、黒崎そごう跡に井筒屋黒崎店など居抜き出店が目立った。有楽町そごうの跡地にはビッグカメラが出店し時代の変化を示した。

■売場をテーマパーク化したデパ地下

中食ブームを受け、人気の惣菜や菓子を集めたデパ地下の売上げが好調だった。東急百貨店では食のテーマパークとして成功した東急東横店フードショーを、札幌・町田・吉祥寺にも拡大した。全国的に改装の目玉として地下食品売場にテコ入れする百貨店が増える中、高島屋がミラノの食料品店ペックの大規模導入を図るなど、食品売場のファッション化が進行した。

■高級スーパー快走

 デパ地下と並んで好調だったのは高級スーパー。ザ・ガーデン、成城石井、クイーンズ伊勢丹などの高級食品スーパーは、価格競争にしのぎをけずる大手スーパーを尻目に、こだわり食材や価格より品質を重視したプライベートブランドなどを揃え人気を集めた。効率重視の大手スーパーとは一味違った、量より質の品揃えに魅力を感じる消費者の潜在ニーズを掘り起こした形である。

■ ジャスコからイオンへ

 2001年2月期、イトーヨーカドーを抜きスーパー業界営業利益トップの座をジャスコが占めた。1985年にイトーヨーカドーがダイエーを追い抜いて以来16年ぶりのトップ交代である。営業利益トップになったジャスコは8月イオンに社名変更。秋田五城目店など新型GMSの相次ぐ開業や低価格プライベートブランド・トップバリュや低価格ナショナルブランド・ベストプライスの開発を積極的に進め、21世紀の小売業を目指す。

■ 米国のカリスマ主婦デビュー

 西友は9月、米国のカリスマ主婦として有名なマーサ・スチュワートさんの提案商品マーサスチュワートエブリデイを販売した。今後のリビング用品の核としてプロモートするもの。日本のカリスマ主婦・栗原はるみのショップも百貨店の集客に一役かっているが、米国カリスマ主婦のセンスは日本の消費者にどう受け入れられるか、これからが注目される。

■ナチュラルコンビニ登場

 成長が鈍化したとはいえ、コンビニエンスストアは大胆な不採算店閉鎖や独自商品開発で8月中間決算では大手4社が増益を確保し健闘している。その中で、健康にこだわり、有機栽培野菜やサプリメントなどを充実させたコンビニエンスストア「ナチュラルローソン」(写真)が7月自由が丘に一号店をオープン、「赤ローソン」として親しまれている。コンビニも個性化する時代を印象づけた新業態開発といえる。

■ ユニクロ人気一服

 この数年、快進撃を続けたユニクロは店舗網が全国に広がり、既存店の売上げの伸びもが飽和状況になりつつある。ブームに一服感が出てきた8月、ダイエーの衣料品ブランドPASに対して「店のつくりを真似している」と内外装の使用禁止を求める仮処分の申請を行い、話題を呼んだ。その一方、9月には英国に進出するなど、新しい動きも始まっている。

■24時間営業しますか

 高成長を続けるドンキホーテは24時間営業でナイトマーケットを開拓した。大手量販店でも午後10時、11時迄の深夜営業をするところが出始めている。イオングループのマックスバリューでは24時間営業を開始した。今まで夜のマーケットを独り占めしていたコンビニにとって競争環境が一層厳しくなることが予想される。

■高感度低価格ショップ、若者に人気

 3月東京渋谷にオープンしたファイブフォックスの「スリーミニッツハピネス」は、さながら100円ショップのファッション版。化粧品、文具、衣料品などを、100円、300円、500円、700円、1000円に価格を絞って揃えている。100円ショップの安さ、コンビニの買いやすさにお洒落感を加えた品揃えが若者の人気を集めた。

■花屋のユニクロ登場

 ある程度のクオリティと圧倒的低価格で急速に顧客を掴んだユニクロスタイルは、他業界にも波及。花のユニクロと呼ばれる花プレンティは、高級・ギフト中心の花屋に価格破壊を持ち込み、カジュアル花束を激安価格で販売し急成長した。青山フラワーマーケットも、キッチン、リビングなど生活シーンに合わせた花のアレンジメントを手頃な価格で販売し人気を集めている。

■IYバンク発足

IYバンクが5月開業し、セブンイレブンの店舗に順次現金自動預け払い機(ATM)の設置を始めた。ATM設置店舗では店頭客数の底上げ傾向など相乗効果が出始めている。2002年にはセブンイレブン全店に設置予定で、イトーヨーカ堂のクレジットカード保有者向けにセブンイレブンのATMを使ったサービスも始動する予定である。小売業の金融サービスへの進出に今後の動向が注目される。

 
 
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