連載 「明日のヒット」につながる気づきノート21

○アメリカ小売業を震撼させた「H&M」の価格革命

(抄録)

商業界 
2001年4月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
H&Mはスウエーデン生まれのファッションを激安価格で売る店です。北欧・ドイツをはじめヨーロッパ・米国に682の店舗網(2000年末)を持つ巨大な製造小売チェーンとして知られています。昨年5月にニューヨーク店をオープン後、全米に2000年末で既に10店舗出店しています。2001年には全米に56店舗出す予定ということで世界的な多店舗展開が進行中です。

安くて良質な価値あるファッションを提供する製造小売業と言えば、「GAP」や「ユニクロ」に代表されるように、ベーシックファッション、カジュアル単品ファッションが中心でした。H&Mが、それらの店に較べて違うのは、「少しトレンド寄りのニューベーシックファッションを扱うこと」「価格がワンランク安いこと」「コーディネートされたスタイルを打ち出していること」です。


バーゲンでは、もともと安い価格がさらに半値になるので、トップスとボトムスをコーディネートして買っても、40〜60ドルくらいです。大半の顧客が、3〜5点くらいの商品を抱えてレジに並んでいる様は、日本の100円ショップのレジ前を彷彿させる光景です。

ヤング向けに限れば、日本にも、トレンディで低価格のファッションの店は相当ありますが、H&Mのように、ヤングからアダルトまでの顧客をカバーしたファッションコンシャスで低価格の店は、まだまだ少ないと思います。H&Mには大きいサイズやマタニティウエア、メンズ、レディス、子供、ファッション雑貨まで豊富に揃い、そのすべてが、低価格に押えられています。企画・生産・販売まで一貫して行う製造小売業として、低価格で世界の消費者に商品を供給する仕組みを確立しているためです。


H&Mでは安いだけでなく、店内のビジュアルプレゼンテーションにも注力しています。各所にあるマネキンで、アイデアのあるコーディネートファッションを見せています。
接客は、こちらからたずねないかぎりしませんが、ビジュアルプレゼンテーションが一つの顧客サービスになっています。
「5番街の品を落とした」とも一部では言われているH&Mですが、柄が一目でそれとわからないようなものをこっそり買ってインナーに着たりしている人も多いようです。また、直ぐ着られなくなる子供服なども、おしゃれで安いので人気です。

いずれにせよ、「トレンドファッションだから高くても買う」という時代は過ぎ去りました。むしろ、「今しか着られないトレンドファッションは、安いものを買ってワンシーズン楽しめばよい」という割り切った考えの消費者も増えています。
「GAP」に対して「ユニクロ」が出てきたように、優秀な日本人のことですから、「H&M」日本版の出て来る日もそう遠くないかも知れません。

「フリース」「Gジャン」など単品訴求のファッションだけでなく、コーディネートスタイルを安く売るファッションの製造小売業が出てきたとしたら、専門店だけでなく、量販店や百貨店にとっても脅威になるに違いありません。どんなものでも価格価値がベースになる、シビアな時代になっています。

 
 
Copyright (C) since2001  有限会社 長原マーケティング研究所 All Rights Reserved.