連載 「明日のヒット」につながる気づきノート21

○世界最大小売業を育て上げた創業から守り通す”10のルール”

商業界 
2003年1月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
ウォルマートの西友買収は2002年の流通業界のビッグニュースでした。今後段階的にリサーチをしながら、日本市場への戦略を検討するという公式発表後も大きな注目を集めています。また、日本市場への進出が成功するかどうかについても賛否両論が渦巻いています。そんな中、日本小売業協会の「ウォルマート徹底研究視察ツアー」に出かけました。

◆ウォルマート発祥の地ベントンビルを訪ねて


まず訪ずれたウォルマート発祥の地で今も本社があるベントンビルは、ダラスから約2時間かかる場所にあります。降り立った飛行場は牛がちらほらしかいない草原のなか。田舎とは聞いていましたが、やはり百聞は一見にしかずです。こんな人の少なそうな地域から出発してよくぞ世界最大の小売業になれたものだと感慨深いものがありました。でも人口の少ないところで商売に成功したからこそ世界最大になれたともいえます。

今回はまずベントンビルでウォルマートスーパーセンターの最新店と、近年ウォルマートが力を入れ始めたネバーフッドマーケットの最新店を見学。その後、博物館になっている創業者サム・ウオルトンが最初にベントンビルに出した「ウオルトンズ5-10ストア」に立ち寄りました。そのウインドウにはひっそりと額に入ったサムのルールがたてかけてありました。

ルール1「自分の仕事にうちこみなさい」
ルール2「利益を部下と分かち合い,パートナーとして接しなさい」
ルール3「パートナー達をやる気にさせなさい」
ルール4「パートナー達とできるかぎり全てを話し合いなさい」
ルール5「部下が仕事のためにやる全てのことを評価しなさい」
ルール6「成功を祝いなさい」
ルール7「会社の皆の意見を聞きなさい」
ルール8「お客の期待を超えなさい」
ルール9「競合相手より上手に経費をコントロールしなさい」
ルール10「流れに逆らって泳ぎなさい」

というビジネスを築きあげるための有名な10のルールです。現在のウォルマートを支えるアソシエイトと呼ばれる社員制度、ベンダーとの卓越したパートナーシップ、どこよりもコストを抑えてどこよりも安く売るエブリデーロープライス(EDLP)戦略の原点がこのルールにあるように思われました。博物館のなかには西友との提携をアピールし、日本と米国の旗を重ねたパネル(写真)が大きく掲示されていました。博物館にはウォルマートの原点とこれからの展望が示されていました。

◆世界NO.1になっても変わらない謙虚な姿勢

 私達を案内してくれたウォルマート社員の受け答えの端々から「当社のエブリデーロープライスを顧客にわかってもらうまでに大変な時間がかかったが、今はウォルマートが最も価格が低いことを皆が知っており信頼して購入している」「我々は食品についてはこれから日本で西友に学びたいと思っている」など、世界ナンバーワン小売業とは思えない謙虚な発言を聞きました。また、ベントンビルの後ダラスでウォルマートと競合するスーパーターゲットやクローガー、アルバートソン、ホールフーズ、H・E・Bセントラルマーケットなどの食品スーパーを見ましたが、全く同じ商品の価格を比較すると必ずウォルマートの価格は最も安かったのに改めて感心しました。店内では外国人である私達にも必ず声がかけられ、お客が10フィート(3.3m)以内に近づいたらお客から声をかけられるよりも先にお客に声をかけ、何か手伝えることはないかとたずねる"10フィートルール"が徹底されているのに気づきました。また、ベントンビルのスーパーセンターでは照明の明るさも天窓からの自然光の入り具合によって調整し、電気代の節約までしていました。

 日本でウォルマートは果たして成功するのか?それは1にも2にも日本人が満足する品揃えができるかどうかにかかっています。米国のなかで特定階層の顧客ニーズをしっかり捉えたウォルマートの商品戦略が日本でそのまま通じるとは思えません。西友とのパートナーシップの是非が成功・不成功の鍵を握っているといえるでしょう。ただし、米国内で見る限り、愚直なまでにルールを重視し、全従業員およびパートナーに徹底する生真面目な経営姿勢が世界最大の小売業に成長した原点であることに改めて気づくことができました。 

 
 
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