連載 「明日のヒット」につながる気づきノート21

○駅ビル再生に見る立地創造の可能性

商業界 
2002年10月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
駅ビルや駅構内の商業・サービス施設は便利だからついでに利用することはあっても、わざわざ利用するような場所ではなかったような気がします。しかし、最近は駅もずいぶん変わって来ました。駅はもともと人が集まるところです。駅の集客力をさらに有効活用しようという動きは、駅を大きく変貌させています。

■ステーション・ルネッサンスで甦る上野駅

今年2月に改修オープンした東京の上野駅では、古びて雑然としていた駅を大きく変えました。ステーション・ルネッサンス計画によって甦った上野駅構内のアトレ上野には、貴賓室や旧駅長室を改造したレトロ館と、モダンな雰囲気の7番街が、天井から自然光が入り明るいグランドコンコースの左右にあり、古いものと新しいものがうまくミックスされています。レトロ館にはレストランやギャラリー、7番街には、ファッション・雑貨・食品・飲食などが入っています。ニューヨークのグランドセントラル駅をモデルにしたという大改修は、どこからが駅でどこからが駅ビルか意識させないほど駅と駅ビルが一体化して楽しいひとつの街になっています。

新しい店が集まるストリートと、懐かしい下町の駄菓子店やお好み焼き店など地元銘店が出店するストリートが同居したり、レトロ館の吹き抜けの2階回廊を利用したBREAKステーションギャラリーでは、古い建物のなかで現代アートの展示が行われたり、古いものと新しいものが融合して、ありそうでいてどこにもない個性的な施設になっています。
この改修で上野駅のイメージは大きく変わりました。今までは上野駅というと、動物園に行く家族連れや中高年男性のイメージが強かったのですが、新しい上野駅には若い人がくつろげるカフェやファッションの店なども多く、若い女性で賑わっています。

 上野駅には、高級スーパー「ザ・ガーデン」も入っています。東京にしかない名店の商品や有名料亭の弁当などを品揃えし、地方への手土産にもよいと好評です。ちなみにこうした駅内のスーパーは「駅スパ」、デパチカに入る高級スーパーは「デパスパ」などとも呼ばれています。かつては限られた場所にしかなかった高級スーパーが進出しているのも、駅の集客力を見込んでのことでしょう。

■無個性な駅ビルから特色ある駅タウンへ

 駅構内には駅コンビニや「ユニクロ」や「無印良品」と提携した構内ミニ店舗が増えています。ネット販売の商品受け取りも便利な駅コンビニでと、駅コンビニで本の受け取りができるネット販売も始まっています。

 ビジネス利用が多い駅にはビジネスコンビニのキンコ-ズも進出しています。これなども、ビジネスマンには大変便利なものに違いありません。また、駅ビル内保育園もいくつかできはじめています。駅にあれば、仕事を持つお母さんや買物などで都心に出るお母さんのニーズにも合います。

駅という便利な場所で、今までにない新しい買物やサービス機能が充実しつつあるようです。
最近の駅ビル開発は東京の目黒アトレが高級スーパー「プレッセ」など食料品店と飲食店だけに絞って開発を行った例や、ルミネ新宿が吉本興業の劇場を組み入れ若い人をひきつけている例などに見るように、立地や場所の条件に合わせて、コンセプトを絞り込んだ特長のある集積をつくりあげていることも注目されます。

駅ビルの改装によって、顧客層が変化したり、いままでさびれていた駅に人が集まったりするのを見ると、改めて「立地は創造できる」ことを実感します。旧有楽町そごうの跡地に居抜きで入ったビッグカメラにも、以前には考えられないほどのお客があふれています。

商店街では、「郊外の駐車場のある大型ショッピングセンターに客が流れてしまった」と駐車場のないことが最大の衰退理由のような議論を聞くことがありますが、果たしてそれだけが衰退の理由でしょうか?これからは高齢化社会でもあり、必ずしも車で行くのに便利なだけが集客のポイントではないはずです。駅には駅に、駅前商店街には駅前商店街に求められる機能や魅力が充実していれば必ずお客は集まります。そんなことを気づかせられた、最近の駅の元気でした。

 
 
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