連載 「明日のヒット」につながる気づきノート21

○一味違う”お試し”の工夫で差別化・固定客化を実現

商業界 
2002年7月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
試食・試飲から試用・試供品の提供まで、お試し販売は買い手にとっては嬉しいサービスです。商品を選ぶ前にいろいろ試すことができれば、最も好みにあったものを選ぶことができます。気軽に試すことで、今まで気づかなかった商品との新鮮な出会いにも繋がります。


■試飲、即売会で顧客の輪を広げる
ドイツワインの専門店「ローテ・ローゼ」は神戸市に1店舗だけの店ですが、顧客は全国に広がっています。
その秘訣は年に4回(東京で3回、神戸で1回)行われるワイン試飲、即売会にあります。全くの無料ではなく入場料を1000円お客からいただきます。その代わり、東京では約100種類、神戸では約200種類(一部有料試飲)のワインが試飲できます。その上、国際規格ソムリエグラスを記念に持ち帰ることができます。毎回大変盛況で、入場をお断りすることもあるほどだそうです。おなじみ客が新規のお客を連れてくることが多く、このワイン試飲、即売会を通じて顧客の輪がどんどん広がっています。

ワインは薀蓄よりも気軽にまず飲んで、お客自身が美味しいと思うワインを選ぶことが大切だと考える同店では、多くの人にワインの味を試して貰う機会をと考え試飲会を始めました。気に入ったワインが見つかった人には即売しています。飲んでおいしかった客が後で注文する場合、神戸以外のお客は、FAXかインターネットなどで注文します。固定客には季節毎におすすめワインを掲載したDMを送り、封入した申し込みハガキでの注文も受け付けています。関西大震災の時には、店を4ヶ月クローズしましたが、その時、全国の顧客からのFAXやハガキの注文で販売を継続することができ、大変助かったとのことです。

この店では、試飲をイベント化し、顧客との定期的なコミュニケーションの場として生かすことで顧客づくりに繋げています。


■ お試しセットをメニュー化する
 お得な値段で何種類かのテイスティングアイテムをメニュー化している店も時々見かけます。例えば、東京お台場ビーナスフォートにあるフランス産の蜂蜜専門店「ラ・メゾン・ド・ミエール・ナミキ」では、カウンターで約30種類ある蜂蜜をテイスティングできます。なかでも蜂蜜3種とパン・バター・セイロンティーがつく蜂蜜テイスティングセット1200円は人気メニューの一つです。日本では珍しい種類の蜂蜜が多いため、できるだけ味を試して貰って販売しているということです。同じビーナスフォート内のチーズ専門店ブリア・サヴァランにはチーズ3種とパン・ワインのセットが食べられるチーズバーがあります。これも味わったことのないチーズを買う前に気楽にテイスティングできる場所として人気です。

 有料でも、ある程度本格的に試食・試飲が楽しめるテイスティングメニューには、無料試食にはないゆとり感があります。美味しさや食感を判断できるほど十分な量をゆっくり味わうことができず「試食したら買わないといけないのでは」というプレッシャーもある無料の試食・試飲に較べて、お客にとって、リラックスして楽しめるわけです。

試食試飲は食品の場合、決め手となるサービスです。そのためには最もおいしく感じられるような切り方、出し方を工夫することが大切です。高級感のある商品などでは、サービスする食器などにも本物感が必要になってきます。
顧客が興味を持ち、立ち止まったら勧めるなど、タイミングが重要です。スーパーやデパ地下で、その気が無い時に楊枝に刺した食べものをいきなり突き出されても食べる気にはなれません。

 顧客に商品を本格的に理解してもらうには、試食・試飲とはいえ大変コストがかかります。試食・試飲だけして購入には繋がらないお客のために多くのコストが費やされてしまうこともあります。

商品によっては必ずしも無料でなくても、顧客が満足できるサービスを有料で提供する試食・試飲のやりかたもあることに気づきます。

試食・試飲そのものを有料イベント化したり、お試しセットやミニパックとして商品化したりするのもその方法の一つです。有料でも気楽に商品を試せる提供の仕方を工夫することは競合他店との差別化にも繋げることができると思います。あなたのお店でもぜひ一味違う試食・試飲を工夫してみましょう。

 
 
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