連載 「明日のヒット」につながる気づきノート21

○何げないことの気づきから始まる真の顧客満足

商業界 
2002年3月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
単行本「お客様投稿集 だから、私はこの店に行きたいー愛される店7つの法則」が昨年商業界から発売されました。月刊商業界に集まった「私の好きな販売員」「私を虜にしたサービス」などをテーマにした投稿作文の中から選りすぐった作品をテーマ毎にまとめて一冊の本にしたものです。この本には嬉しい買物体験・怒りの買物体験を通した"お客の本音"が凝縮しています。この本の監修をさせていただいたおかげで、本の紹介をかねて話をする機会が増えました。その中で、"気づき"の大切さを改めて感じる機会がありました。


■本屋にベビーカーを置く理由
 ある集まりで、書店の方から質問がありました。第7章の「本屋にベビーカーがある!」という投稿に感心し、子供連れの郊外店で早速とりいれたいと思っているので、事例の書店はどこか教えてくれないかということでした。早速出版部から筆者に問い合わせていただき、3年前の事例ですが、今でもベビーカーは健在ということも確認でき、店名を質問者にお知らせしました。

 質問した方の話では、その書店に今までベビーカーがなかった理由は、色々検討した結果というよりは、そうしたニーズの重要性に特に気づいてなかったからだということです。その人が、「本屋にベビーカーがあった!」を読んで「はっと」気づいたと聞き、お客様へのサービスは、「まず、気づくことから」始まるのだなということを改めて感じました。
「本屋にベビーカーがある!」では、子供を抱きながら、本屋に行くと空いた手がひとつしかないのでゆっくり本を選べないため、内容をよく確認しないで買ってしまい、後で後悔することが多いという筆者の悩みが書かれていました。「ベビーカーがあると両手があき、本を手にとって見ることができる」と、小さい子供のいるお母さんにとって本屋にベビーカーがあることがどんなに嬉しいことかを伝えています。


■手がふさがっては買物意欲が減退


手がふさがってしまうことは買物客にとって重要な問題だということを科学的に調査して指摘した本があります。(「なぜその店で買ってしまうのか」早川書房)この本の中に「手の問題の重要性」という項があります。よく見かける光景ですが、寒い日には、女性はハンドバッグとコートを持ち、一本の手で買物しています。何か一つ買物すると二本の手がふさがってしまいます。よほどの買物意欲がない限り買物客はそれ以上我慢できないと指摘しています。手は2本しかないので、荷物を持っていたり、カゴを持たずに数点の商品を買ったりすると買物客の手はすぐふさがってしまいます。手がふさがってしまうと人は買物を続けるのを止めてレジに向かいます。

この本では、ある店で3個以上の商品を抱えたお客にカゴを渡す方針を従業員に徹底させたところ、売上げがカゴの使用に比例して上昇した例を挙げ、カゴは入り口だけでなく、店内全体に買物客が必要としそうなところにはどこにでも置くことが必要だと指摘しています。

「なぜ、その店で買ってしまうのか」が指摘した「買物客の手は2本」という点から、カゴの置き方、ベビーカーの必要性のほかにもクロークやロッカーをいかにわかりやすいところに設置するか、買物を頼むと駐車場まで回しておくサービスの必要性などいろいろな対応が考えられます。

 お店は買物客のことがわかっているつもりでも、案外買物客の本音や本当に困っていることはなにかが見えていないことが多いものです。「だから、私はこの店に行きたい」はお客様の投稿作文から、「なぜ、この店で買ってしまうのか」は買物客の尾行観察からと手法は異なりますが、2つの本のいわんとするものには共通点が多々あります。「手の問題の重要性」のほかにも、「店員との接触が増えるほど売上げが増える」「子供が歓迎されない店は親も背を向ける」なども共通点として挙げられるでしょう。このように身近な事例やデータからお客の本質を、もう一度見直してみましょう。はっと気づくことがあるかも知れません。

 
 
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