連載 「明日のヒット」につながる気づきノート21

○絶好調「デパチカ」に学ぶ新需要創出のヒント

商業界 
2002年2月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
 デパートの地下食品売場、通称デパチカの話題はテレビや雑誌でよく見かけます。単に身近で取り上げやすいからというだけではないようで、調べて見ると確かに業績も好調です。今年1月からのデータを見ると、チェーンストアの食品売上、家計消費の食品消費支出が減少するのを尻目に、デパートの食品売上は2月と7月を除いては対前年を上回り、異彩を放っています。


■ お客の五感に訴えかけるデパチカ商法

東京でデパチカブームの先鞭をつけたのは、渋谷東急東横店の2000年4月のリニューアルでした。今までの東横のれん街の古臭い印象を一変し、東急フードショーと看板を塗り変え、大胆な変革を行いました。オープンキッチンを今までの4倍に増やし作りたて感を演出しています。デパート初出店のテナントを多数導入し、オリジナリティを強化しています。また、グローサリーについては有名高級スーパーを思い切って導入しました。店内は、多数の魅力的なテナントがしのぎを削り、あちこちに行列ができています。東急東横店食品売場はこの改装で大きく売上を伸ばしています。
 日本橋三越も食品売場を順次改装しています。中でも、今年3月に入ったバームクーヘンの店クラブハリエは印象的です。本格的なショップインファクトリー(店舗内工場)を設置し、バームクーヘンが焼きあがる様子を大きなスペースをとって見せています。見る楽しさ、おいしそうな匂いがお客を惹きつけ、ここでも行列ができています。

 神戸そごうの地下にもユニークなお店がありました。「音楽食品〜チャイコフスキーを聞かせてピロシキを造っています」と書いたパネルをもったシルクハットに燕尾服の案内看板が店の前にたっている「ピロシキ屋」です。オープンキッチンはガラス張りでピロシキの加工工程がわかるように、ドウをつくる人、餡を入れる人、油であげる人がお客に向かって横一列に並んで一心にピロシキを作っています。その中に流れるチャイコフスキーのBGM。ここでもお客は楽しそうに行列していました。この店は京都高島屋BFにも今年の秋から出店しています。

 デパチカで人を集めている売場は、どこも美味しさだけでなく、見た目、匂い、掛け声、音楽など5感に訴えています。だからこそ、デパチカに人が集まっているのだと思います。


■ お客本位で飽きさせない品揃えが人気

楽しさだけでなく、最近のデパチカはお客の立場にたった売り方をいろいろ工夫しています。量より質を求めるお客のトレンドに合わせて1パック40Gのミニパック惣菜で人気の新宿京王百貨店。日本橋高島屋では、さらに10G単位の量り売りやケーキ一個売りを打ち出しました。ケーキ一個売りには専用の箱も用意します。
 ミニパンだけを集めたミニワンコーナーも福岡三越にありました。ミニカレーパン、ミニクロワッサンなど小さいサイズの菓子パンを集めたコーナーです。

 レシピの提供、作りかたの実演、料理材料のパック販売を一箇所に集めた立川伊勢丹のトッデイズレシピは、主婦の悩みー今日の献立を解決するソリューションサービスです。

 顧客を飽きさせない週替わり、日替わり、の品揃えも人気です。仙台藤崎では、日替わりの菓子売場「菓子セレクション」が好評です。全国から評判のお菓子を集めて日替わりで提供しています。東京のデパチカでも有名パティシエのお菓子を日替わりで提供する売場が増えています。先ごろオープンした渋谷西武ザ・ガーデンにある「ホットパティシエ」もその一つで注目を集めています。

このようにお客を惹きつけているデパチカには様々な仕掛けや工夫が見られます。デパチカは、大多数の人がおなかいっぱいの現在、新たな需要を創出するには、商品があるだけではなく、買い物する楽しさ、わくわく感をどれだけ提供できるかが大切なことに気づかせてくれます。

 
 
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