○スローフードとごまかしのない食品

ストアーズレポート 03年2月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
牛肉などの食品偽装問題が多発し、食品への不信感が高まった2002年。そうしたなか、安全・安心な食品により一層の関心が高まり、地域に根ざした質の高い食品を守ろうというスローフード運動がじわじわと広がりを見せています。
もともとスローフード運動は、ローマにマクドナルドが進出した時に、ファーストフードに対してアンチテーゼとしてスローフードという考え方を唱えたイタリアのジャーナリスト、カルロ・ペトリーニ氏を中心にはじめられました。ファーストフードによる食の均質化に対抗して地域に根ざした食の豊かさの再発見を掲げ、地域の食文化を守り未来に継承していこうとする運動です。

 日本で初めて本格的なスローフードの紹介が行われたのは、2001年秋の伊勢丹新宿店のイタリア展でした。その際、スローフード協会がプレス発表を行いスローフードの存在を日本の消費者にアピールしました。2002年秋のイタリア展でも伊勢丹新宿店ではスローフード協会の保護を受ける希少な食材を集めて紹介しています。その他、期間限定のスローフードレストランも設置され人気を呼びました。

 2002年お歳暮では、東京池袋の東武百貨店が「スローフードは美味しい」をテーマにした特設コーナーを作り話題を呼びました。日本全国にも自然が育んだ素材を使い、昔ながらの製法で手間と時間をかけながら作られたスローフードはたくさんあります。そのなかから集めた、放し飼いで育った合鴨の鴨鍋セット、北海道十勝産の大豆と天然にがりで作ったこだわり豆腐のしゃぶ豆腐セットをはじめとして、なかなか手にはいらないこだわりのフルーツ、ワイン、焼酎、日本酒、調味料などが一堂に並べられていました。ギフトセンター開催中に完売となった商品も多く、人気のほどがうかがえました。

スローフードという言葉が日本になかった頃から良質で地域に根ざした食品の紹介をしている百貨店があります。
 山形市の大沼山形本店には「ごまかしのない食品」コーナーがあります。山形さらど事業共同組合の紹介を受けた食品を展開しています。大沼の活動を詳しく取り上げた「暮らしの手帖が選んだ誠実な食品」という本に、'さらど'の意味が書かれています。「しんとした夜をついて雪が降る。朝起きて雨戸をくると、外はまぶしい銀世界---そんな足跡ひとつない雪野原のことを山形の人たちは{さらど}と愛でる」とのことです。
山形さらど事業共同組合は、安心安全な商品づくりを目指し、県内だけでなく、全国からその活動に共鳴する業者が参加しています。食材を厳選し、添加物を使わずに安全で安心して食べられる食品をつくり、低価格で提供することが同組合のテーマです。

昨年秋、山形市で(財)山形県企業振興公社主催の流通経営大学講座の講師を務めた折、大沼の食品売場に行って見ました。まず、目に入ったのが「ごまかしのない食品」コーナーでした。「ごまかしのない」というキャッチに強いメッセージを感じました。10数年前からつくられているコーナーなのに、偽装食品が横行する現在の消費者をはっとさせ、ひきつける売場です。

大沼では、毎年「ごまかしのない食品」フェアも開いています。2002年夏で12回目になるそうです。安心なものを食べたいという消費者のニーズは日に日に高まっているので、「ごまかしのない食品フェア」も注目を集めています。2002年お歳暮でも「ごまかしのない食品」は贈答の看板商品となっています。

「ごまかしのない食品」と「スローフード」。その言い方に違いはありますが、消費者の安心・安全な食生活と地域の良質な食品の生産の継続を願う根っこのところでは共通しています。

生鮮食品に「トレーサビリティ」(生産履歴の追跡)の開示が求められ出した今日、百貨店の売る食品にも、単においしさ・新しさの追求だけでなく、安全で安心できる本物が求められる時代だといえます。
 
 
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