○横並びリニューアルから脱皮を始めた百貨店

ストアーズレポート 03年12月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
某ラジオ局から、「今年秋、百貨店のリニューアルが多いのは、なぜ?」という取材が来ました。「毎年、春と秋は百貨店のリニューアルシーズンで、今年が特に多いわけではないと思いますけど」というと、納得できない様子。この秋、百貨店はリニューアルで巻き返しをはじめたという印象を持っているようです。

 繊研新聞9月6日号によると、今年秋冬の百貨店改装は86件、昨年秋は89件で、ほとんど件数は変わっていません。春のリニューアルが66件と少なかったことと、今年の秋のリニューアルがデパートそれぞれの個性を打ち出すものが増えたことで、インパクトが強かったことが注目された理由ではないかと思います。

■ リビングを充実した玉川高島屋ショッピングセンター

9月に新南館をオープンさせた玉川高島屋ショッピングセンターでは、リビングと食品、飲食ゾーンを充実させました。オーダー枕の専門店や高級ビーズ専門店、オーガニックコットンタオルや自然原料の石鹸などを扱う専門店、テイストを絞った人気の家具店やアンティーク家具の専門店などリビングファッション関連のショップが多数入っています。
同店は東京山の手の豊かな顧客層の多い場所にあります。こうした顧客層のニーズに合わせて、すでに充足している衣料品だけでなく、衣料以外の生活を上質化する商品を揃えています。他にないこだわりのある高感度なインテリアショップの集積は地元だけでなく東京中から注目されています。

スターバックスが初の家族向け店舗を出し、子供連れでゆっくり楽しめるよう工夫した特別室トドラーズラウンジやCD視聴コーナー、試食カウンターなどを設けたことも話題を呼んでいます。

■男性消費に挑んだ伊勢丹

 伊勢丹では、メンズ館を35年ぶりに全館リニューアルし、久々のメンズに向けた発信にメディアでの露出も際立っています。

統一した環境デザインによってフロア全体をブランド化することで買い回り性を高めることを目指しているとのことで、各フロアで、ブランドが目立たず、一つ一つの商品が目立つ店づくりが行われています。その一方、顧客がブランドを目指して買う商品については、ゆったりとしたショップスペースをとりブランドの世界を見せています。顧客の志向をよく把握し、ブランドで買いたいもの、商品本位で選びたいものを分け、絶妙なバランスで売場構成をしているように見受けられました。

百貨店のメンズ売場というと、いままではオジサン向けの暗い売場イメージがあります。同時に、お洒落に無頓着な夫や息子の服を代わりに買いに来るオバサンが目立つ売場という印象もありました。しかし、リニューアルで大きく変わった伊勢丹にはかっこよい男性客、またはお洒落な男女カップルが喝歩しています。年配でも、それなりに渋く決めた人が多いようです。

お洒落は服だけではないと、1階にはメンズフレグランスや小物、地下にはバッグ、靴、肌着なども充実しています。

他にも、今年のバレンタインデーにイケメン販売員を起用したところ好評だったプランタン銀座では9月のリニューアルオープンから受付に男性案内係を配置し話題になっています。
大宮そごうではクラフトワールドという女性のための手づくり専門店やリラクゼーションコーナーなど時間消費型の売場を充実させています。

こうして見ると、この秋のリニューアルは件数こそ去年と変わりませんが、内容的に従来の百貨店横並型のリニューアルから、各店が自店の顧客ニーズに合わせた独自性を競うリニューアルに変化してきたことが注目されます。

今まではリニューアルというと、まずはレディースファッション、次に食品でした。しかし、成熟した消費者は自分自身の生活に楽しさや彩りを加えてくれる新しい提案を百貨店に求めています。個性を競いだした百貨店のこれからが期待されます。

 
 
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