○しつこい接客、顧客は売りつけられるのが大嫌い

ストアーズレポート 03年6月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
売場でセールストークをはじめたとたん、お客がさっと引いていく経験をしたことはありませんか?お客に聞くと、買物していて嫌なことのナンバーワンに「しつこい接客」が挙がってきます。

最近も、おじさん向け雑誌「おとなの週末」から取材を受けました。「デパートの売場をもっとゆっくり見たい」という内容で、「すぐ寄ってくる店員・しつこい店員…なんでだろう?」という読者の疑問を投げかけています。

この雑誌が取材したところ、男性客の7割が「せっかく洋服を買おうと思ってデパートに行ったのに店員がそばにまとわりついて落ち着かない」体験をしたことがあるそうです。

最近では、「いらっしゃいませ」という最初の声かけをした後は、お客から尋ねてこない限り、むやみに接客しない店も多いと聞いていますし、販売員の数も以前よりは減っているはずですが、まだまだ男性客には、デパートの販売員の売り込みはしつこいという印象が強いようです。

こうした男性客は売りつけられるプレッシャーなしにゆっくりと商品を見て選びたいと思っていますが、一生懸命アプローチする販売員に、「今日のところは、自由に見させてください」とはっきり言えるほど気が強くありません。むしろ、販売員が寄ってくると、買物したいのに、そそくさとその場を立ち去ってしまう人もいます。こうした心理は、男性客だけでなく、若い人や気の弱い中年女性にも共通しているものだと思います。

このような気の弱い人、ゆっくり自由に商品を見て選びたい人に対しては、販売員は接客したい気持ちを時には抑える必要があるようです。

「最初のご挨拶以外は、こちらから声をかけるまでほっておいて欲しい」「商品説明に入るタイミングが早すぎる」と、多くのお客が感じています。販売員はお客に窮屈な思いをさせることなく、自由に商品を手にとって見られるような雰囲気づくりに注力する必要があります。


■もの言わぬ販売員の活用

今の人は量販店やコンビニエンスストアでの自由に商品を選ぶセルフサービスの買物に慣れています。セルフ販売では、買う商品が決まってから、販売員に声をかけます。こうした買物に慣れたお客には、販売員に代わって、商品を詳しく説明する情報の提供が好まれます。販売員がつきっきりでアテンドするような超高級店は別として、通常の店では、接客を補う情報を店頭で発信することが益々重要になっています。

POPはもの言わぬ販売員といわれます。美的感覚を損なわない範囲で、文字等による情報の提供を工夫し、お客に自由に商品を見てもらう工夫も必要になってきました。

ある靴の専門店では、プライスカードにお客から質問がよくある項目をあらかじめ表示しています。女性靴なら用途・ヒールの高さ、男性靴なら製法・底材・修理可能かどうかを書き添え、一目でどんな靴かわかるようにしているのです。その店のオーナー店長は「すべて接客で情報を伝えるという考え方もあるが、販売員に聞かなくても、ある程度の情報がお客様にぱっと目に入ることで、それをきっかけに会話が始まることが多い」といいます。特に女性靴でのヒールの高さなどは必ず買う時に聞かれるポイントなので、あらかじめ書いておくと、販売員にとっても、すぐ受け答えでき便利だそうです。プライスカードに情報を加えるだけなので店頭もすっきりしています。

■買いたくても、売りつけられたくないのが顧客心理

同じ接客をしても、お客によってはしつこく受け取られる時もあれば、物足りなく感じられる時もあります。お客の状況や心理に合わせたフレキシブルな対応はいつの時代にも必要なことです。さらに、今日の時代にお客に気持ちよく買物してもらうためには、時には接客をおさえたり、接客以外の情報提供を充実させたりすることが重要です。お客は買いたいと思って売場に来ます。でも売りつけられるのは大嫌いなのです。

 
 
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