○全体不況でも期待できる消費の寄せ上げ好況

ストアーズレポート 03年4月号
 
(有)長原マーケティング研究所 代表 長原紀子
 
最近、私の住んでいる小さな街が東京12チャンネルの出没!アド街ック天国(以下略称アド街)という番組に出ました。普段は近いというだけで利用している店もテレビで紹介されると、ちょっとした名店に見えてくるから不思議です。翌日、早速番組にとりあげられた店々を回ると、どこも普段は空いているのにお客で賑わっています。行きつけのおそば屋さんにも、ふだん見かけない若い男性のグループが来て、「アド街に出ていた特別メニューをお願いします!」と注文していました。和菓子屋さんでは番組で紹介された焼大福を買いに中年女性客が詰めかけていました。

テレビ放映は小さな街の目立たない店々を少しばかり活気づけたようです。テレビを見て遠くからお客がやってきたという様子はなく、ご近所の人がテレビに出た店にワッと出かけたため、一時的な消費の寄せ上げ効果があつたと見られます。ただし、効果は一過性で、1週間もすると、元のご近所店に戻ってしまいました。

■全体不況・部分好況

全体不況のなかで、一部の商品やサービスは絶好調という傾向が続いています。
例えば、ルイ・ヴィトンのバックを持つ女性の多さ。地下鉄や電車のなかで1車両に必ず数人は見かけます。1時はプラダも多かったことがありますが、最近はルイ・ヴィトンが圧倒しています。

 また、遊園地・テーマパークといえば、東京ディズニーランドの1人勝ち。閉鎖に追い込まれる遊園地やテーマパークが増えるなかで相変わらずカップルやファミリーの人気を集めています。

書籍の販売額は全体的には減少していますが、人気のハリーポッターシリーズの発売日には書店に行列ができました。その他「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」「世界がもし100人の村だったら」「声に出して読みたい日本語」など、出版不況といわれるなかで、ミリオンセラーも続出しています。

ショッピングセンターに併設されていることの多いシネマコンプレックスでは、どこも人気のある映画だけを集中して上映しています。

元々、映画や本、音楽ソフト、ゲームなどの文化的消費については、仲間とのコミュニケ-ションの種に読む・聴く・見るという傾向があります。そのため、話題の商品・サービスに集中する傾向は否めません。その上、最近は、送り手側も「売れる」と思った作品に集中してマーケティングを仕掛けるようになり、一層集中化が高まっています。その結果、少数の売れるものに顧客が集中し、売れないものは全く売れないという傾向が強まっていきます。

 情報化が進めば進むほど、「良い」「面白い」「かっこいい」という情報がインターネットやメディア、口コミの相乗効果でひろがり、人々は「売れているもの」を欲しがります。すべての商品・サービスがブランド化され、ブランドとして認知されればされるほど人々の購買意欲は高まります。

飲食やサービス施設でも、話題のところに人が集まります。評判どおり良かったら「テレビで取り上げられていたレストランに行ったら、思った通り素晴らしかったわ」と自慢できますし、良くなかったらなかったで「案外ダメね」とまた話の種にすることができるからです。冒頭に紹介したアド街効果もその一例といえるでしょう。

■寄せて上げる需要作りが必要な時代

少子化で人口の伸びが止まり、1人当たりの所得が伸びない今日、総体の購買力の伸びは期待できません。しかし、点在する潜在的需要を寄せて上げ、一つの目に見える需要としてまとめることができれば、部分的な活況を作り出すことができます。

ただし、弛緩した体型を寄せて上げるには、補正下着をつけたり、エクササイズをしたりそれなりの持続的な投資や仕掛けが必要です。そうした努力がなければ、わが街のように、瞬間的に注目を集めてもあっと言う間に元に戻ってしまうのです。

 
 
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